【マッチレビュー】J1第31節 ヴィッセル神戸vs名古屋グランパス

【マッチレビュー】J1第31節 ヴィッセル神戸vs名古屋グランパス

前節のベガルタ仙台戦での勝利で勝ち点を38まで伸ばしたヴィッセル神戸。

この日の名古屋グランパスとのゲームは、勝てば残留確定の可能性もある大事な一戦です。

天皇杯に集中するためにも、早い段階で残留を確定させておきたいところ。

J1第31節のヴィッセル神戸対名古屋グランパスのマッチレビューをお届けします。

両チームのスタメン

ヴィッセル神戸と名古屋グランパスのスタメン

ヴィッセルはベガルタ戦に続き、3-4-3の布陣を敷いてきました。

前節途中交代したフェルマーレンに代わり、左CBにはオマリが先発。ベンチにはポドルスキに代わってサンペールが名を連ねます。

一方の名古屋グランパスは、4-4-2の並び。

太田が左SBに入り、ボランチは米本とエドゥアルド・ネットのコンビ。ジョーと長谷川がツートップを組みます。




【前半】

ヴィッセルはベガルタ戦、サンペールをスタメンから外した3-4-3が機能。この日のゲームもこの形を継続してきました。

これに対してグランパスのフィッカデンティ監督は、しっかり相手を分析して対策を講じてきます。

コンパクトなツーラインでカウンターを狙う

名古屋は守備の場面で、中盤と最終ラインがフラットな4枚のツーラインを敷いてきました。

これは守備に重きを置くフィッカデンティらしい戦術で、ツーラインは非常にコンパクトな距離感を維持しています。

これに手を焼いたのがヴィッセルのパス回しです。

中心となるイニエスタがボールを持っても、前線にスペースがなく消去法的にサイドへ展開する場面が多く見られました。

前線はビジャ、小川、古橋がスリートップ(ワントップツーシャドーにも変化)を形成しますが、名古屋の4枚のディフェンスラインに対して数的優位を作れず、攻撃は単発に終わってしまいます。

ベガルタ戦では相手が3バックを採用してきたことで効果を発揮したこの布陣ですが、この日はスタート時からグランパスの策にハマってしまった印象でした。

不安を露呈した左CBのオマリ

この日ヴィッセルは前節負傷交代したフェルマーレンに代わって、オマリが先発で起用されました。

フェルマーレンはベルギー代表への招集が発表されているだけに、コンディション的には出場もできたのでしょう。

しかし余計なリスクを冒したくないというのがフィンクの判断であり、決して間違いではありません。ただ、代役のオマリはこの日攻守において精彩を欠いてしまいました。

まず、対面するグランパスの右SH前田に1対1で翻弄されていました。本来は対人守備に強いオマリですが、3CBでの守りは不慣れな印象で、ポジショニングの曖昧さが前田に自由にプレーさせるスペースを与えてしまっていました。

前半12分には、右サイドからカットインした前田がやや遠目の位置から見事なミドルシュートを叩き込みあえなく失点。

この直前にはボールがラインを割ったとヴィッセルの選手達がセルフジャッジしてしまい、足を止めてしまったのもマイナスでした。

1失点目が伏線となって追加点を献上

先制を許したヴィッセルは、ここから反撃を仕掛けます。

グランパスの狙いはツーラインでブロックを敷いて、ボールを奪ったら素早いカウンターを狙うことにあります。

ヴィッセルはCBのダンクレーや大崎がビルドアップに参加してこのブロックをこじ開けにかかりますが、決定機をモノにできません。

すると23分、後方からのロングボールをジョーが収めると、右サイドの前田に繋ぎます。

前田はオマリと1対1に持ち込むと、1点目のカットインが意識に残るオマリをあざ笑うかのように縦に突破。右足でグラウンダーのクロスを送ると、逆サイドから走り込んできた和泉が合わせて追加点を奪いました。

1点目の得点シーンを伏線に使い、オマリの抜き去った前田のプレーは上手いとしか言いようがありません。オマリは前田に対してメンタル的に後手を踏んでおり、明らかなウィークポイントとなっていました。




【後半】

前半早くも2失点を喫して、立て直しを迫られた神戸。

なんとか打開策を見つけたいところですが、ハーフタイム明けもややちぐはくな戦いぶりとなってしまいます。

古橋の単独突破は見られるも連携が乏しい

この試合を前に発表された11月の日本代表メンバーに、古橋が初選出されました。

この試合は直後の試合とあって、古橋のプレーぶりにひと際注目が集まっていました。古橋は攻撃的なポジションで精力的にプレー。

持ち前のスピードと積極的なシュートは相変わらずで、好調さを伺わせます。一方でやや気になったのは、単独突破に固執してしまったように映った点です。

後半も何度かフリーでビジャが待ってるシーンがありましたが、古橋はシュートやドリブル突破を選択しました。攻撃のプレイヤーとしてこの選択は間違いではありませんが、パスで崩すというヴィッセルのスタイルからするとやや勿体無いようにも感じられました。

とくに相手がしっかりとブロックを敷いているだけに、細かいパスを繋いで揺さぶる動きは欲しかったところ。代表に選出されたことで見る側の視点が厳しくなっているのかもしれませんが、古橋の能力の高さを知っているだけにどこかで1つパスの選択肢が欲しかったです。

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三度前田のプレーから失点

54分。決定機を逃していたヴィッセルは、ゴールエリア付近でのクリアがやや中途半端になると、こぼれ球を拾った前田がボックス内に進入。

ジョーとのテンポの良いワンツーで抜け出すとグラウンダーでシュート。これがカバーに入っていたダンクレーに当たってしまい、オウンゴールとなってしまいました。

これ3失点目。いずれも前田の突破が起点になっており、この日のMVPは間違いなく彼でしょう。

ただ、この場面でもヴィッセルはラインが下がり気味で、最終ラインの不安定さが見られました。中盤と最終ラインの間にスペースが空いてしまい、ここをグランパスに自由に使われてしまった格好です。

図らずも際立ってしまったのが、フェルマーレンの不在の「在」。ベルギー代表のCBは、対人はもちろんポジショニングに非常に長けていますその点オマリは4バックのCBなら強さを発揮しますが、この日は悪い面が多く見られてしまいました。

とくに、「居るべきタイミングでいない」という場面は多く、ビルドアップでも後方や横へのパスを優先してしまい、迷いながらプレーしている印象でした。これはチーム戦術の浸透という点も原因で、オマリ個人だけの責任とは言えないでしょう。

サンペールの途中起用でややリズムを取り戻す

76分には、イニエスタに代えてサンペールがピッチに入ります。

サンペールが3CBの前に入ることで、ボールの中継地点が生まれパスのリズムは向上しました。ビジャに代わって入った藤本も見せ場を作るなど、惜しい場面が見られたのは好材料でしょう。

しかし残念ながら、15分程度の短い時間では3点を奪い返すのは難しいミッションです。

サンペールが起用されなかったのは、守備面でのリスクを回避する戦術的な理由が大きいですが、この日のゲームに関して言えばスタメン起用もありだったでしょう。

とくにグランパスがフィッカデンティに交代後リトリート気味に戦うことを踏まえると、いつもの3-5-2でも良かったもしれません(結果論ですが…)。

ベガルタ戦は攻守に連動性があり、クリーンシートで終われるなど収穫の多い試合でした。これが2試合続けて同じ布陣を敷いてきた理由の1つですが、試合前の戦術的な読み合いはグランパス側に軍配が上がったということでしょう。

結局試合は0-3でグランパスの勝利。

ヴィッセルは勝ち点を積み上げることができず、残留確定は次節以降に持ち越しとなります。

フィンクの抱えるジレンマ

このゲームは、フィンクが抱えているジレンマがはっきりと見て取れる試合でした。

悩ましい外国籍枠の問題

ヴィッセルが目指すのは後方からパスを繋いでゴールを奪うサッカー。そのためには、パスの中継点となるサンペールの存在は大きな意味を持ってきます。

一方で、激しいプレッシングやサンペールへのマンマーク対策などから彼が機能しないゲームも散見されます。

そうしたゲームではフェルマーレンやイニエスタ、ビジャといったタレントの「個」に頼ることになるのですが、ここでもう1つ悩ましいのが外国籍枠です。

例えばこの日のゲーム、前線で起点となるポドルスキが使えれば、後半はまた違った戦い方もできました。しかしポルディを入れるなら、枠の問題でサンペールは外さざるを得ない。

すると今度は後方のパス回しが停滞する…結果として個の力が単発的に終わってしまい、相乗効果を得られなくなる…。

これはヴィッセルが今季ずっと抱えているジレンマですが、すべての外国籍選手が揃った現在のフィンクは、相当なジレンマを抱えているように感じます。

今オフの人員整理は避けられない

一方でフィンクの采配がこうした個のタレントを中心に築かれているという点も、課題がフォーカスされる要因とも言えます。

しかしシーズン途中からの就任で、本人の意向で獲得できたのは藤本のみ。スカッドの采配はクラブ側の主導だったため、こうした状況に陥ったとも言えるでしょう。

唯一の救いは、勝ち残っている天皇杯がリーグ戦終了後に日程が組まれているということ。

この天皇杯をモチベーションに、リーグ戦をなんとか無事乗り切り、来季へのステップを築きたいところです。

いずれにしても、今オフの人員整理は避けられない状況でしょう。去就の噂が心配されるポルディやビジャ、出場機会が少ないウェリントンやオマリらの動向は気になるところ。

現状では攻撃陣にかなりウェイトを割いたスカッドになっているため、今オフはチームのバランスを取り戻す編成が期待されます。