J1マッチレビュー2019 PR

J1第22節 ヴィッセル神戸vs大分トリニータ

ヴィッセル神戸のマッチレビュー
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前節ガンバ大阪に2-2と引き分けたヴィッセル神戸。

劣勢から勝ち点1をもぎ取った粘りは素晴らしかったですが、なかなか勝利を飾れない試合が続いています

この日の相手は、大分トリニータ。

藤本の電撃移籍もあって、試合前からボルテージの高まる両チームの試合は、ヴィッセルらしさが随所に見られる展開となりました。

両チームのスタメン

スタメン ヴィッセル トリニータ

ヴィッセルはこの日、バルサから加入したフェルマーレンが先発出場

最終ラインは大崎を真ん中に3バックを形成し、中盤の底にサンペールを置き、山口とイニエスタがセンターハーフを務めます。注目の藤本も、さっそくベンチメンバーに名を連ねました。

トリニータは好調のオナイウをトップに据え、小塚とティティパンが2列目に。藤本の抜けたポジション以外は、固定メンバーが並びました。

【前半】質の高いポゼッションを披露した神戸

前半はヴィッセルが終始ボールを握って攻撃を組み立てる試合展開に。

質の高いボールポゼッションから、トリニータゴールを脅かします。その中心に位置したのはアンカーのサンペールでした。

出色の輝きを魅せたサンペール

ヴィッセルは前回のトリニータ戦同様、相手のGKを含めたビルドアップに狙いを定め積極的にプレスを仕掛けます。

プレスは効果的に機能し、トリニータからボールを奪うと古橋やイニエスタを中心にショートカウンターを発動。とくに古橋は立ち上がりからミドルレンジのシュート狙うなど、ゴールの匂いを感じさせていました。

遅効の場面ではサンペールが出色の輝きを披露。相手マーカーの間にポジションを取り、最終ラインから巧みにボールを引き出すと、前方に縦パスを供給。

これまではイニエスタがボランチまで降りて全権を握っていましたが、この日はサンペールが組み立てを担い、イニエスタはゴールに近い位置でプレーしていました。

加入当初こそ運動量の少なさやボールロストが目立ち厳しい声も聞かれましたが、このゲームをチェックしたサポーターならサンペールの能力の高さに拍手を送ることでしょう。

いまやヴィッセルにとっては必要不可欠なプレイヤーです。

フェルマーレン加入でディフェンスラインが安定

バルサイズムを体現するもう1人のプレイヤー、フェルマーレンも能力の高さをしっかり披露してくれました。

この日は3バックの左に入ると、落ち着きのあるボールさばきで最終ラインに安定感をもたらします。

とくに際立っていたのはポジショニングで、相手右サイドでプレーした田中は自由なエリアを見つけ出せず、本領を発揮できませんでした。

これまでこのポジションを務めてきた宮(水戸へレンタル移籍)はマンマークの意識が強く、マーカーに付いてしまい裏のスペースを狙われていました。

その点フェルマーレンは欧州らしいゾーンでの対応を基本に、ここぞのタイミングで前に出てボールを奪うスタイル。奪ってからそのままボールをキープする技術も高く、ベルギー代表の名に恥じないプレイヤーであることを、わずか90分で証明してみせました。

イニエスタの粘りからパスを受けた古橋が豪快ミドルで先制

後ろの守りが安定感を増すことで、質の高いボールポゼッションを続けられたヴィッセル

トリニータの我慢強い守りに手を焼きながらも、確実にゴールに迫っていきます。

32分。ピッチやや左寄りでボールを受けたイニエスタがドリブルを開始

一度はトリニータのマーカー2人に挟まれ倒れたように見えましたが、すぐさまバランスを取り戻しドリブルを再開。

ボックス内に進入すると中央の古橋へパスを出します。古橋はトラップから振り向きざまに豪快なシュートを放つと、これがバーを叩きそのままゴールへ。

見事なゴラッソで先制点を奪いました。

巧みなボディバランスを披露したイニエスタはもちろん、前半幾度もミドルシュートを狙っていた古橋の積極性が功を奏したシーンでした。

あえて真ん中を使わない組み立て

ヴィッセルの攻撃にフォーカスすると、この日はあえて中央のエリアを避けるようにボールを繋いでいました

相手は3-6-1でダブルボランチを形成。一方のヴィッセルはアンカーを置いて中央は3枚の布陣。

真ん中を無理に使ってしまうと、相手に数的有利を作られてカウンターにピンチを招きますが、センターハーフのイニエスタと山口はややサイド寄りに開きながらボールを受けることで、マーカーから距離を取ってボールを繋いでいました。

トリニータとしては、居るべき場所に人がいない状況が生まれてしまい、プレスにやや迷いが見られていました。そこにサンペールの巧みなポジショニングがプラスされ、、前半の効果的な攻めに繋がりました。



【後半】トリニータが運動量を武器に反撃開始

前半はヴィッセルがペースを握っていましたが、後半はホームのトリニータが持ち前の運動量を活かして反撃に出ます。

CKからカウンターで同点を許す

後半開始早々、ヴィッセルのコーナーキックの流れでトリニータがカウンターを繰り出します。

ここで2つのミスが出てしまいました

1つは最初の山口のトラップミス。トラップしたボールは相手の小塚に渡ってしまい、ブロックが整わないうちに決定機を作られてしまいます。

もう1つはサンペールの守備。これはやや戻りながらの対応で難しいシーンでしたが、あそこでボールに触れていればもう少し時間は作れたでしょう。

結果として飯倉がオナイウのシュートを防ぐものの、弾いたボールが再度オナイウに当たり同点ゴールに。

前半が素晴らしい出来だっただけに、もったいないミスで失点を許してしまいました

相手の運動量が増えたことで中盤がバタつく

トリニータは同点ゴールを奪ったことで息を吹き返すと、「らしさ」を感じさせるプレーを披露します。

前半は自分達がボールをキープしていることでリズムが整っていたヴィッセルでしたが、一転して相手の早いペースに巻き込まれてしまいました

とくに中盤の守備はややバタつき気味で、うまく相手をブロックできない時間帯が続きました。

ただ、こうした時間帯で崩れず耐えしのげたのは、最終ラインが安定していたから。飯倉は決定機を阻止するビッグセーブを披露。

フェルマーレンやダンクレーは対人能力の高さを発揮し、大崎もラインを上手く統率していました。

結局両者とも決定打を欠き、試合はこのまま1-1のドローで終了。試合終盤にはトリニータから電撃移籍を果たした藤本も起用されましたが、ボールを受ける回数が少なく不発に。

古巣サポーターの手厳しいブーイングも響きましたが、本領発揮はこれからでしょう。

トリニータ戦で得られた3つの収穫

ガンバ戦に続き勝ち点3を逃した試合となったヴィッセルでしたが、少なくない収穫があったように思えます。

1.3バックがしっかり機能していた

1つ目は、3バックがしっかり機能していたということ。

これまでヴィッセルの最終ラインは、個人能力の高さに頼った守りが多く、バランスを欠いた試合が目立ちました。

しかしこの試合ではダンクレー、大崎、フェルマーレンの3人がしっかりバランスを保ちながら、安定した守備を披露していました。

飯倉加入の効果も絶大で、高い最終ラインの後ろのスペースをしっかりカバーし、自らも攻撃に起点としてプレー。

仮に4バックを採用したとして、飯倉が2CBの間でプレーできることで、バランスを崩すことなくゲームを組み立てることができます。

2.サンペールとイニエスタの共存

すでに本文でも述べましたが、この日はサンペールが組み立て役を担い、イニエスタがゴールに近い位置でプレーしていました。

この役割分担は、ボールを繋ぐ意識を改めて強めているチームにあって大きなメリットとなります。

これまでイニエスタが後方でプレーすると、攻撃はウェリントンへのロングボール一辺倒になっていました。しかしこれはバルサ化を目指すチームの本意とは言えません。

やはり目指すべきは、パスを繋いで相手を剥がすこと。

サンペールを中心にチームを作り、イニエスタがより攻撃に専念できれば、チームの完成度はより高まっていくでしょう。

3.バルサ化への帰還

3つ目は、リージョ退任でやや遠ざかっていたバルサ化の道へ返り咲いたということ。

ボールを繋ぐことに取り組んでいるのは選手やフィンクのコメントからも伺えますが、一時期はカウンターによる現実路線を採用していただけに、もう一度スタートラインに立ったイメージでしょうか。

もちろんこのトライは一筋縄では行かないものですが、この日のサンペールとフェルマーレンのプレーを見ると、新たな希望を抱かせてくれます

一方で現在の順位は降格圏の1つ上。勝ち点差はわずかで、目の前の数字を拾うことも必要です。この辺りにどう折り合いをつけるのか。リーグは残り12試合と3分の2を消化しただけに、プレッシャーのかかる状況からは早い段階で抜け出しておきたいものです。



ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。