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【マッチレビュー】J1第9節ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレ

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「ポジティブなことはなかった」と試合後に語った吉田監督。この日の敗戦で、ヴィッセル神戸はリーグ戦4連敗となってしまいました。

得点シーンを中心に、この試合を振り返ってみます。はたして本当にポジティブな要素はなかったのか?Jリーグ第9節、ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレのマッチレビューをお届けします。

両チームのスタメン

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この日のヴィッセル神戸のスタメンには、怪我からビジャとイニエスタが復帰したものの、ポドルスキが負傷欠場。左サイドバックには前節に続き三原、右ウイングには小川が起用されます。

一方の川崎フロンターレは、ACLによる過密日程や負傷者の続出で大きくメンバーを入れ替えてきました。中盤には田中碧、右サイドでは斎藤学がスタメンで起用されています。

【前半】両チームのパス回しが光

イニエスタ復帰したヴィッセルは、前節の浦和戦に比べスムーズなパス回しが見られました。やはり、収まりどころできることで、ビルドアップでの焦りが抑制されるように映ります。

川崎フロンターレも、主力選手が欠場する中でも質の高いサッカーを展開。両チームともポゼッションを志向するチームとあって、ボールを基準にゲームが進んで行きます。

中途半端な壁の作りでFKから失点

好ゲームが期待されるかと思っていたのも束の間、ヴィッセルはミスから先制点を献上してしまいます。

得点シーンは前半15分。ゴールに向かってやや右寄りでFKを得たフロンターレは、馬渡が直接ゴールを狙います。ボールは右ゴールポストに当たりゴールに。キム・スンギュは一瞬左にステップ踏んでおり、予想とは逆を突かれた格好です。

このシーンで悔やまれるのは、ヴィッセルの壁の作り方がやや中途半端だったということ。キム・スンギュはリスタート前に指を2本出し、壁の枚数を2枚と伝えています。壁に入ったのは小川と古橋で、どちらも高さがあるプレイヤーではありません。両選手はジャンプをすることもなく、キックの直後には壁の真ん中をぽっかりと空けてしまっています。足元を狙われることを警戒していたなら、壁を空けることは考えられないでしょう。

キム・スンギュがどういう意図で壁をしたのか、壁に入った小川と古橋に意図は伝わっていたのか。両者の意思疎通ができないまま、中で合わせてくると決め込んでような守り方でした。

またもパスミスからカウンターで追加点を奪われる

追加点を奪ったのも川崎フロンターレでした。前半37分、中盤のパスミスから斎藤学がドリブルで持ち上がると、知念がボックス内でシュート。このシュートはキム・スンギュがセーブしますが、こぼれたボールに小林が反応しゴールを奪いました小林は今季リーグ戦初ゴールです。

この失点シーンも、ヴィッセルの課題と言えるビルドアップ時のパスミスからでした。イニエスタからのボールを山口がキックミス。ルーズボールを奪った田中碧が素早く斎藤に繋いで、カウンターを決めています。

山口蛍は決してボール足下の技術が劣るプレイヤーではありません。しかし最近のヴィッセルのプレイヤー全体に言えることですが、ポゼッション時に焦ってボールを繋ごうとしてしまい、イージーなミスが多く見られます。この日はキーパーのキム・スンギュやイニエスタもパスの精度を欠いており、ミスは混乱が続くチーム状況からくる、メンタル的な影響が大きいように感じます。

【後半】グループとしての成熟度の差

後半のスタートは両チームともメンバー交代なし。前半に比べパス回しやプレッシャーの強度が上がったヴィッセルですが、複数人が絡む川崎フロンターレとはグループとしての成熟度に大きな差があるように感じました。

選手交代で反撃に出るヴィッセル

なかなか反撃の糸口がつかめないヴィッセルでしたが、選手交代によりリズムを掴んでいきます。57分、小川に代えて郷家を投入。郷家は左ウイングの位置に入り、ゴールに向かうプレーでシュートチャンスを作るなど、試合の流れにアクセントを加えます。

68分にはサンペールに代えて三田をピッチへ。この選手交代で戦況が大きく変わりました。三田はセンターハーフの位置に入ると、運動量の多さを生かして攻撃に積極的に絡んでいきます。パスの出し手になるかと思えば、ゴール前に飛び出し受け手にも、右サイドに開いてサイドアタックの起点になるなど縦横無尽に動き回ります。得点はこの流れから生まれました。

82分、三田がサイドに流れると、イニエスタが飛び出し中央のクロスを送ります。競り合いの中でこぼれたボールを郷家が拾うと、フリーで待ち構えていて古橋へ折り返します。古橋はこのボールを落ち着いて決め、ヴィッセルが1点を返しました

反撃は1点止まり。フロンターレがしたたかに守り切る

しかし、ヴィッセルの反撃はこの1点だけでした。終盤には左SBの三原に代えて田中を投入し、4トップのような陣容を敷きますが、得点の匂いを感じたのはビジャのFKのみ。

川崎フロンターレは運動量が落ち劣勢の状況でしたが、試合終盤に向けて選手交代のカードを上手に使い、1点のリードを守り切りました。主力を欠き、決して本調子とは言えなかったフロンターレですが、したたかに勝ち点3を奪ってゲームを終えるあたりはさすがです。

一方のヴィッセルはこれでリーグ戦4連敗。GWのホーム戦での敗戦は、多くのサポーターが落胆したことでしょう。試合後の吉田監督からは、「ポジティブなことはなかった」と辛らつな言葉が聞かれるなど、重苦しいムードが漂っています。

ポジティブなことは“ある”

吉田監督の口からはポジティブなことはないと聞かれましたが、個人的にはいくつかプラスの要素が見られたように感じます。

1.三田が絡んだ攻撃の形

1つは目は、三田が絡んだ攻撃の形です。これまでも三田待望論は多く聞かれましたが、この日は彼の良さが際立っていたように感じます。イニエスタの運動量の低さを補いつつ、より攻撃的なポジションでプレーさせてあげる。とくに前半はイニエスタが低い位置に留まったことで、ビジャが孤立していました三田の投入以降は、イニエスタはよりゴールに近い位置でボールを触り、ワンツーやスルーパスを出していました。

また、三田はボールを出した後のスプリントも厭わないプレイヤーです。吉田監督に代わってからはサイド攻撃の頻度が多くなる一方で、中央の枚数が不足していました。三田がボールを繋いだ後に、イニエスタを追い越すようにしてゴール前に顔を出してくれれば、中央の厚みや攻撃のバリエーションも生まれます

2.より3バックに近いビルドアップ

2センターバックが両サイドに開いてビルドアップをするヴィッセルですが、その途中でパスミスが出てしまい失点を許すシーンが多くみられます。この日の2失点目も同様の展開でした。

しかし後半途中から、サンペールが最終ラインにはっきりと加わる3バックのような形でビルドアップをするシーンが見られました。これまでもアンカーが下りてくる形は頻繁に見られましたが、トライアングルを作るのが基本形でした。しかし、これでは、パス回しの際に中央部分が大きく空いてしまい、カウンターのリスクが高まります。

大崎とダンクレーは対人には強いものの、スピード面では不安を持っています。そこで、あえてビルドアップ時に3バックのようにしっかりブロックを形成しつつ、両サイドを押し上げるよう守備を整備してみてはどうでしょうか?

もちろん理想は2センターバックでのビルドアップですが、現状ではパス回しの精度に課題を抱えています。また、サンペールに代わって上下に運動量のある三田を起用し、山口をアンカーに据えれば、3バック気味のビルドアップでも厚みを加えられるはずです。

3.両ウイングのサイドに固執しないプレー

最後に、試合終盤に見られた古橋と郷家がサイドに固執しないポジショニングもポジティブなアイデアを与えてくれました。

前半は小川と古橋が両ワイドに開き、中央の守備ブロックを開かせる狙いが見てとれました。これは吉田監督交代後の顕著な変化ですが、一方でそれまで見られていたサイドから中に走り込むプレーは減少しています

例えば、サンフレッチェ広島戦や浦和レッズ戦のように、相手が最終ラインでブロックを敷いてくる相手なら有効な戦術かもしれませんが、川崎フロンターレには効果があったとは言えません。とくに古橋は守備に忙殺されるシーンも多く、持ち味が消えてしまっている印象する受けます。やはり彼の良さは、イニエスタとの連携でゴールに向かってスプリントをする場面でこそ発揮されます。郷家は自分でボールを持ちアタックすることでアクセントを加えていました。

サイドに固執せず、柔軟に戦術を変化させることで、バリエーションのある攻めを生み出すことができるのではないでしょうか。

次節は札幌戦。攻撃姿勢を取り戻せるか

ヴィッセル神戸の次の試合は、北海道コンサドーレ札幌戦。攻撃的なサッカーを貫くペトロビッチ監督が指揮官とあって、ヴィッセル神戸にとっては攻撃的な姿勢を取り戻すまたとない相手です。

試合後半に見られたポジティブな要素を取り入れつつ、頻繁に見られる集中力の欠如(パスミス)を解消できるのか。さまざまな混乱が続く現状を見ると、グループとしてまとまるには結果を出すしかありません。次節札幌戦は勝ち点3を奪いたいですね!

以上フットボールベア―のマッチレビューでした!

ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。