【マッチレビュー】J1第8節 ヴィッセル神戸vs浦和レッズ

【マッチレビュー】J1第8節 ヴィッセル神戸vs浦和レッズ

今回のマッチレビューはJ1第8節、ヴィッセル神戸vs浦和レッズをお届けします。

突然のリージョ監督の契約解除や、ポドルスキのキャプテン返上に揺れたヴィッセル神戸。一方の浦和レッズは、ここまでホームで未勝利と、今ひとつ波に乗り切れません。

苦境を脱するきっかけを作るのはどちらか。ゲームは浦和レッズのホーム埼玉スタジアムで、5万人を超す大観衆の中で行われました。

両チームのスタメン

浦和レッズとヴィッセル神戸のスタメン
ヴィッセル神戸vs浦和レッズ スタメン

ピッチ外の騒動で大きく揺れたヴィッセル。さまざまな憶測が漏れ聞こえる中での試合は、スタメンに誰が起用されるのか注目されました。

大観衆を落胆させたのがイニエスタの欠場。コンディション不良が理由のようですが、浦和戦は2試合連続の欠場とあってレッズサポーターからは多くのため息が聞かれました。そのイニエスタの代わりに起用されたのは小川。ポドルスキをトップ下に配置して、小川は右ウイングでの先発となります。

また、左サイドバックには守備での貢献が見込める三原、キーパーにはキム・スンギュが名を連ねました。起用法が議論を呼んだサンペールも変わらずスタメンに入ります。フォーメーションは両サイドがやや低い位置に入る4-2-3-1です。

一方の浦和は3-1-4-2のシステムで、青木をアンカーに置き、柏木とエヴェルトンがツーセンターハーフでコンビを組みます。オリベイラ監督は守備の安定が図れる3バックの布陣を敷いてきました。

【前半】インテンシティの高いゲーム展開に

戦前の予想通り、ヴィッセルがボールを握りレッズが待ち構える展開でスタートしたゲームですが、予想以上だったのが両クラブのインテンシティの高さです。

両サイドのスプリント力を生かしたヴィッセル

ヴィッセル神戸,オフェンス
ヴィッセル神戸 オフェンスの形

ゲーム前にハードワークの重要性を語っていた吉田新監督。この言葉通り、ヴィッセルは運動量の多いゲーム運びを見せます。とくに目立ったのが両サイドのスプリント

ビルドアップはリージョ体制と同じように大崎とダンクレーがワイドに開き、両サイドバックを押し上げます。真ん中にはサンペール、もしくは山口が下がってボールを受けると、パスを繋いで攻撃を組み立てます。

リージョ体制との違いは、両サイドが斜め(ダイアゴナル)のスプリントでゴール前を何度も狙っていること。とくに右サイドで起用された小川は何度も裏への飛び出しを見せ、対面する槙野とマッチアップを繰り広げていました。

この、サイドアタッカーに高い運動量を求める点は、吉田体制の特徴でしょう。

ヴィッセルがミスからPKを献上し先制を許す

どの選手もこれまでのゲームに比べ運動量も多く、期待感が漂うヴィッセル。しかし高いテンションとは裏腹に、先制点は浦和レッズが奪います。

前半10分、ビルドアップの途中で左SBの三原が大崎にバックパスを送ります。ここで大崎がまさかのスリップ。足を滑らせた隙にレッズの興梠がボールを奪うと一気にドリブルでボックス内に進入。なんとかカバーに入ったダンクレーでしたが、興梠のフェイントに堪らず足を掛けてしまいPKを献上してしまいました。

PKではキム・スンギュが心理戦仕掛けますが、じっくりと相手の動きを伺った興梠が落ち着いて右サイドに決め、浦和レッズが先制点を奪います。

大崎にとってはあまりにも痛いミス。ゲーム展開も悪くなかっただけに、悔やまれる失点となってしまいました。

堅牢な守備ブロックを敷いたレッズ

1点を追い掛けるヴィッセルでしたが、レッズの敷いた堅牢な壁が立ちはだかります。

浦和レッズ,ディフェンス
浦和レッズ 守備ブロック

レッズは守備の場面では両サイドの橋岡と山中が最終ラインまで下がり、5バックを形成します。さらに、フォワードの武藤が右ワイドにポジションを移すことで中盤に4人のラインを構築。この2つのブロックを敷くことで、ヴィッセルにスペースを与えさせない「堅牢な壁」を作り出していました。

ヴィッセルの両サイドが見せるスプリントには槙野と森脇が粘り強く対応。また、ポドルスキに対してもケルンでチームメイトだった槙野が、幾度となくハードな守備を見せるなど、ヴィッセルに自由を与えませんでした。

それでもいくつかのチャンスを生み出したヴィッセルでしたが、最後の場面で決めきることができず。結局前半は1-0で折り返します。

【後半】決定力を欠いた神戸、我慢強く守った浦和

後半の開始からは追いかけるヴィッセルが攻勢を仕掛けます。

数的有利を作り出せなかったヴィッセル

前半は右サイドの小川のスプリントが目立ったヴィッセルでしたが、レッズの強固なディフェンスラインを揺さぶることはできませんでした。

そこで後半は左サイドの古橋と中央のポドルスキがより高い位置で攻撃に打って出ます。この策が効果を発揮し始めると、決定機となるチャンスが徐々に生まれ始めました。

しかし、この日のヴィッセルはチャンスを生み出しても、ゴール前で数的有利を生み出すことができませんでした。古橋や小川がサイドエリアでフリーでゴールを持っても、ボックス内にはウェリントンが1人という場面が連続。これでは、レッズは複数で守りを固めることができ、脅威を感じることもないでしょう。

中央からの飛び出しがほとんど見られなかった

ボックス内で数的有利(あるいは同数)を生み出せなかったのは、中央からの飛び出しがほとんど見られかったから

この日はイニエスタが不在のため、ポドルスキがパスの出し手となっていました。そのためゴールに近い位置でプレイすることができず、シュートチャンスはほとんでありませんでした

ダブルボランチの一角に位置する山口は、守備やビルドアップで低い位置に構えるため、ゴール前に顔を出すことができません。とくに後半は主に山口がセンターバックのあいだに下がって組み立てのスタートとなっていました。さすがの山口の運動量でも厳しいでしょう。

オリベイラの巧みな交代術

一方山口と並んでプレイしたサンペールは何度かゴール前に顔を出しチャンスを生み出しました。しかし70分あたりからはスタミナが尽き、運動量が激減。さらにレッズがエヴェルトンに代えて投入した長澤のマークも、彼の消耗を加速させたようです。

レッズは長澤を投入したのは、57分。ヴィッセル優位で進むゲーム展開を変えるべく、攻守でハードワークできる長澤を起用してます。エヴェルトンはアンカーで起用されることもありましたが、タイプから言えば攻撃に違いを生み出すプレイヤー。スタイルでは長澤の方がより多彩なタスクをこなすことができます。

橋岡の負傷交代は誤算でしたが、宇賀神はベテランらしいプレーで徐々にサイドの安定を図ると、70分には最後のカードとして柏木に代えマルティノスを起用します。狙いはマルティノスの推進力で、前掛かりになっているヴィッセルの勢いを止めること

ヴィッセルの吉田監督は、71分にポドルスキに代えて田中を起用。76分には右サイドの小川に代えてドリブラーの増山、81分には左SBの三原に代えて初瀬と、次々と攻撃的なカードを切ります。

しかし、すでにパスの起点となる中央の攻防で後手に回っている状況では、効果的なパスを供給できません。とくに田中とウェリントンをツートップにしたことで、中盤と前線の距離が間延びし、攻撃の停滞を招いてしまいました

やはり百戦錬磨の名将オリベイラ監督と、スクランブルでの再登板となった吉田監督の間には指揮官としての差があったことは間違いないでしょう。結局試合は1-0でホームの浦和レッズが勝利。レッズは嬉しいホームでの今季初白星。一方のヴィッセルは、リーグ戦3連敗となってしまいました。

神戸に見えたいくつかの光明

大きな混乱の中で迎えたこの試合、ヴィッセルは悔しいミスで敗戦を喫してしまいました。しかし、ポジティブな要素がなかった訳ではありません

サンペールに感じた可能性

騒動の中心人物として議論の対象となったサンペールは、イニエスタ不在の中で攻撃の起点となるパスを見せるなど、徐々にコンディションを上げてきています。とくに、相手の間を外すような動きが多く見られるようになりました。これが彼本来の持ち味なのでしょう。

一部ではサンペールへの厳しい意見がありますが、そうした喧騒の中でハードにプレイした姿は評価に値します。この日のサンペールの走行距離は両チームトップの11.446km。もちろん、終盤のスタミナ切れは大きな課題ですが、今後への可能性を感じさせてくれました

ハードワークの姿勢はチーム全体に見られる

また、吉田監督が掲げたハードワークの姿勢は、随所に見ることができました。走行距離はレッズの107.997kmに対し、ほぼ同等の106.624km。

前節サンフレッチェ広島に10kmもの差をつけられていました。いくらポゼッションスタイルを押し進めるといっても、現代サッカーにおいて運動量は欠かせないでしょう。

またスプリントの本数もレッズの161本に対して、ヴィッセルは160本。ここにイニエスタという一級品の出してが加われば、状況は好転するかもしれません。

光明は見えども楽観視は…

いくつかの光明は見えたゲームでしたが、楽観視ができないことは紛れもない事実でしょう

とくにポドルスキを巡る一連の騒動は、今後も予断を許しません。その上、この日は一定の評価ができたハードワークも、ヴィッセルの掲げるバルサ化の本質ではありません。あくまでもボールプレイで相手を崩すことがバルサイズムです。

リージョが去ったいま、バルサイズムを伝承できるのは、イニエスタ1人だけでしょう。コンディションが上がり切らないサンぺ―ルや、ストライカーのビジャにそれを求めることは難しいと言えます。

ともすれば、すべてのタスクをイニエスタに預けることになってしまう…その先に明るい未来があるとはなかなか想像に難しいでしょう。本家バルセロナとの親善試合を発表し、対外的にはポジティブな空気を演出しているヴィッセルですが、サポーターにとって不安な日々はしばらく続きそうです。