前節の湘南ベルマーレ戦に敗れ、リーグ戦2連敗。
攻守のバランスが著しく悪いヴィッセルですが、この日は超攻撃的なサッカーを志向する横浜Fマリノスとの一戦です。
好調を維持する相手に対して、しっかり立ち向かうことができるのか?試合はホーム、ノエスタで行われました。
両チームのスタメン

ヴィッセルは7月17日に、三田のFC東京への完全移籍を発表。
中盤の構成が注目されましたが、アンカーに山口を置き、イニエスタと安井が2CHでコンビを組みます。安井は今季初スタメン。
最終ラインはダンクレーが欠場し、宮と大崎がこの日もペアを形成。GKもキムスンギュではなく、前川が起用されました。
一方のマリノスは、ほぼ不動のメンバー。マルコス・ジュニオールとエジガル・ジュニオが縦関係になり、両サイドには遠藤と仲川が起用されます。
【前半】良いゲームの入り方をしたヴィッセル
ヴィッセルは、試合開始からハイプレスを仕掛けます。
マリノスのGKを含めたパス回しが狙いですが、これが効果を発揮。ゲームの入りはヴィッセルが掴みました。
イニエスタがゴールに近い位置でプレー
この試合に臨むにあたり、フィンクは「イニエスタを攻撃的なポジションで起用したい」と述べていました。
その言葉通り、このゲームではボランチから一列前にポジションを取り、攻撃のタクトを握ります。
イニエスタがゴールに近い位置でボールを持てることで、ロングボールに頼らない短いパス交換が活発に。また、本人がシュートを狙うシーンも増えるなど、攻撃のバリエーションが増えています。
ボランチの置くと、どうしてもウェリントンやビジャの裏抜けを狙うロングボールが多くなりますが、狭いスペースでも高いクオリティを魅せてくれるイニエスタの存在感は抜群でした。
ハイプレスにはハイラインをセットに
立ち上がりから、前線からのハイプレスを仕掛けたヴィッセル。前の3人がマリノスのパク・イルギュを含めたパス回しに狙いを定め、積極的にボールを奪いにいきます。
ポイントとなるのは、ハイプレスを志向するなら、ディフェンスラインも高く保つ必要があるということ。
前が追いかけるだけで後ろが間延びしてしまっては、マリノスに自由なスペースを与えるだけです。その点は大崎を中心に意識が共有されており、ハーフスペースを狙う相手の両SBにも粘り強く対応していました。
もったいない前川のミスから失点
しかし、先制点は思わぬミスから生まれてしまいます。
前半38分、山口からのバックパスを受けたGKの前川がボックスの外でスリップ。
マリノスにボールを奪われると、短いパスを繋がれ、最後はエジガルにゴールを奪われてしまいました。
相手のプレッシャーをかわそうとした前川の意図は分かりますが、ミスの代償が大き過ぎました。ヴィッセルのフィールドプレイヤーも、思わぬ展開にボールだけを追い掛けるような守備陣形を取ってしまい、最後はエジガルをフリーにしてしまいました。
先制を許したヴィッセルは、42分にイニエスタ、44分にウェリントンが決定機を迎えますが、いずれも得点に繋がらず。
この時間帯に追い付いていれば…というのは結果論ですが、前半の流れは自分達にあっただけに、スコアを振り出しに戻しておきたかったのが本音でしょう。
【後半】立ち上がりの決定機も奪えず後手に回る
後半もヴィッセルが前からプレッシャーを仕掛け、マリノスがボールを繋いで素早い攻撃を狙う流れとなります。
立ち上がりにヴィッセルは決定機を作りますが、決めきることができませんでした。
流れはあるのに得点が奪えない。
チームの焦りは試合が進むごとに増していき、後手に回る展開となります。
エジガルが負傷、チアゴは一発退場となるもチャンスを掴めず
試合が動き出したのは54分。マリノスのフォワード、エジガル・ジュニオがプレー中に足を負傷。そのまま担架で運ばれ選手交代となります。
マリノスは準備していた三好を投入。しかし動揺があったのか、59分にセンターバックのチアゴ・マルチンスが古橋を倒してしまい、一発退場。
やや厳しい判定にも見えましたが、決定機を阻止したという意味では致し方ないプレーでした。
チアゴはスピードがあり、対人では抜群の存在感を発揮していました。マリノスは慌てて水戸から新加入のCB伊藤を投入します。
数的優位となったヴィッセルでしたが、なかなかチャンスをものにできません。イニエスタの惜しいシュートもありましたが、ゴールには至らず。
70分に安井に代えて郷家を投入しましたが、試合は動きませんでした。
前川がPKを与えてマリノスが追加点
結果として、再三のチャンスを決め切れなかったのが試合の勝敗を分けてしまいました。
76分、素早いリスタートで抜け出した仲川がボックスに進入。飛び出した前川の手が仲川の足に掛かってしまい、PKとなります。
これをマルコスがしっかり決めてスコアは0-2。
前川の飛び出しは難しい判断でした。滑り込んだタイミングでボールを遠い位置にキープした仲川の上手さもあったように感じます。
ただ、リスタートの場面はヴィッセルの選手達も集中を欠いており、同点ゴールを奪えなかったダメージが蓄積していたのでしょう。
ヴィッセルは失点後、小川と田中を投入し、3バックで反撃に出ますが効果的な一手とはならず。
結局試合はこのまま終了し、リーグ戦3連敗となってしまいました。
信頼の置けるキーパーの不在は事実だが…
この日のトータルでの出来を考えると、チームとしては及第点以上の内容でした。
しかし居面でのミスや決定機を決め切れなかったことで、自分達で難しい展開に持ち込んでしまった印象があります。
厳しい評価ですが、現状ではJ1の正GKを務めるだけの安定感が前川にはないと言えます。プレーする姿から不安が感じられるなど、メンタル面で自信をなくしているのかもしれません。
ただ、それが敗因の全てとは言えないでしょう。キム・スンギュという韓国代表のプレイヤーを起用できない状況を生み出したチームマネジメントの拙さはきちんと論じておくべきです(もちろんスンギュも決定的なミスが多いのは事実ですが…)。
味方を鼓舞する選手がいない。なぜポルディが起用されていたのか━
この試合でとても気になったのは、ピッチ内で味方を鼓舞するような声を上げるプレイヤーが見られなかったこと。
イニエスタはキャプテンとして珍しく感情を出していましたが、それも彼本来のパーソナリティーではありません。前川の最初のミスの場面で、すぐさま駆け寄った大崎のプレーくらいでしょうか。
なぜ運動量や守備に弱点があるポドルスキを起用していたのか。それは彼が生粋の「キャプテン」だったからです。彼が声を張り上げ、ピッチはもちろんスタジアム全体を鼓舞するような姿は、今の神戸に足りない部分と言えます。
バルサにはかつて、プジョルという闘将がいました。
彼のパッションを失ったバルサは、ペップというカリスマと高度な戦術を元に力を維持してきました。昨シーズンバルサはビダルを獲得しましたが、新しい刺激をクラブが求めている証とも言えるでしょう。スマートな戦いだけでは勝てないのが、フットボールの妙ということでしょうか。
夏の移籍マーケットが鍵になる
オマリ選手:
「ヴィッセル神戸に来たということは、何かを達成しなければならないという大きな責任があると思うので、それに向けてしっかり準備して、自分のすべてをささげたいと思います」#visselkobe #ヴィッセル神戸 pic.twitter.com/7AIybH2yAZ
— ヴィッセル神戸 (@visselkobe) July 24, 2019
さて、ヴィッセルは7月23日に、アル・ナスルからジョアン・オマリ選手の獲得を発表しました。
これまで三原、三田と流失が続いていただけに、ひとまず朗報の言えます。
昨季サガン鳥栖で残留に貢献した左効きのCBですが、サイドやボランチでもプレーできるなど、起用法に幅が生まれます。外国籍枠という点はやはり気になりますが、現状は大きな戦力となってくれるでしょう。
今後も夏の移籍マーケットでは動きがありそうなだけに、急務といえる守備を強化するタレントの獲得に期待したいですね!