2020年のJリーグも約3分の1が終了。新型コロナ禍による混乱が続くものの、ひとまず序盤戦を消化したといえます。
そこで今回は、ヴィッセル神戸のここまでの戦いぶりを整理すべく、チームスタッツを元にしたデータ比較をお届けします。
昨シーズンのデータと、8月19日までのリーグ戦11試合のデータを比較し、今シーズンのチームスタイルを考察していきたいと思います
2020年序盤戦┃ヴィッセル神戸の主要チームデータ
シーズン | ゴール | ドリブル | クロス | パス | インターセプト | クリア | タックル | シュート | 走行距離 | スプリント回数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 1.8 | 12.9 | 13.8 | 591.9 | 3.6 | 18.3 | 18.8 | 12.1 | 108 | 162 |
2020 | 1.3 | 11.7 | 14.9 | 630.2 | 2.6 | 15 | 15 | 15.4 | 109 | 160 |
まずは、2020年のヴィッセル神戸のスタイルを視覚的に捉えるため、主なデータをピックアップしてレーダーチャートを作成しました。
青が2019年のデータ、オレンジが2020年の序盤戦(8月19日までのリーグ11試合)のデータです。J1、18クラブのデータを順位付けし、上位からポイントに換算。1位=18pt、2位=17pt…といった具合に、グラフの項目が大きいほどリーグでの順位も高いことを示します。
まず気になるのが、ゴールの項目です。昨シーズンは1試合平均1.8点でしたが、今シーズンは平均1.3点と得点が奪えていないことが分かります。シュート数は増加し、ドリブルやスプリント回数に大きな変化がないことを見ると、「決定機を逃している?」という推察ができます。また、クロスの回数が増えている点も気になるポイントで、「サイド攻撃が増加?」との見方ができます。
また、主要なデータ項目の中でもっとも気になったのが、タックル回数の減少です。順位では大きな変動はありませんが、一試合平均18.8回だった昨季から15回に減少し、「球際のインテンシティに課題?」という推察ができます。
データ参照:FootBall LAB公式サイト
詳細なデータから見えるチームスタイルの変化とは?
項目 | 2020年 | 順位 | 2019年 | 順位 |
---|---|---|---|---|
ゴール | 1.3 | ⑪ | 1.8 | ② |
シュート | 15.4 | ④ | 14.4 | ④ |
枠内シュート | 5.3 | ② | 5.3 | ① |
PKによるシュート | 0 | ⑫ | 0.2 | ② |
パス | 630.2 | ② | 591.9 | ⑤ |
クロス | 14.9 | ⑧ | 13.8 | ⑭ |
直接フリーキック | 12.6 | ④ | 11.1 | ⑫ |
間接フリーキック | 0.8 | ⑰ | 1.4 | ⑭ |
コーナーキック | 5.5 | ⑤ | 5.3 | ⑤ |
スローイン | 19.5 | ⑩ | 18.2 | ⑭ |
ドリブル | 11.7 | ⑥ | 12.9 | ⑦ |
タックル | 16.8 | ⑬ | 18.8 | ⑫ |
クリア | 15 | ⑱ | 18.3 | ⑱ |
インターセプト | 2.6 | ② | 3.6 | ① |
オフサイド | 1.3 | ⑭ | 2.5 | ① |
警告 | 0.9 | ⑬ | 1.1 | ⑦ |
退場 | 0 | ① | 0.1 | ① |
30mライン進入回数 | 58.3 | ③ | 49.2 | ⑤ |
PA進入回数 | 13.5 | ⑥ | 15 | ③ |
攻撃回数 | 109 | ⑬ | 110.9 | ⑮ |
ボール支配率 | 59.20% | ② | 57.90% | ② |
さて、レーダーチャートから大まかなイメージを掴んだところで、詳細なデータからさらに考察を進めてみましょう。
大きなポイントは2つです。
1.手数が多くシュートまで時間がかかっている
まず、ゴール数の減少について。データを見ると、シュート本数は増加し、枠内シュートの数も横ばいとなっています。
ただ、ドリブルやPAへの侵入回数が微減しており、パス本数やポゼッション率が高いことを考えると、パスを回してシュートには結び付けるものの、ドリブルや飛び出しといったアクションが少ないという状況が推察できます。実際ゲームを観ていても、「得点のためのパスではなく繋ぐためのパス」が多い印象で、裏抜けの回数は少なくなっています。
これはCFがビジャからドウグラスに代わった点も一因のでしょう。クロスの本数が増えている点は、ドウグラスという高さを活かす選択肢が増えたため。裏抜けを得意とするラインブレイカーのビジャとはプレースタイルが異なるため、彼をチーム全体で活かすイメージがまだ共有できていないといえます。
ただ、ドウグラス個人だけでなく、チーム全体としてシュートまでの手数が多く、結果としてクロスを「選ばされている」という課題も浮かび上がってきます。ワンタッチ、ツータッチのリズムの良いパスの展開が見られないため、相手にブロックを敷かれてしまいサイドからのクロスが多くなっている―。
ヴィッセルの強みであるテンポの良いパス回しと、裏のスペースを有効に活用するという意識がチームで積み上がっていくと、昨季の得点力復活を期待できます。
2.球際でのインテンシティが低下している
次は、レーダーチャートの部分で気になるポイントとして上げていた、インテンシティの低下についてです。
まず、データを見ると、一試合のタックル回数が平均18.8回だった昨季から、15回に低下しています。これは、リーグの順位では大きな変動はありません。過密日程によるリーグ全体の傾向ともいえますが、気になるのがFootBall LABが独自に算出している「奪取ポイント」です。奪取ポイントとは、ボール奪取に関するデータを偏差値化したもので、昨シーズンのヴィッセルはリーグ3位の88.22ptでした。これが今シーズンは76.85ptに下がり、リーグ12位に留まっています。
攻撃的なスタイルを採用するヴィッセルにとって、ハイラインを保ちボール保持を目指すには、強度の高いプレスがセットで機能しなければなりません。しかしデータの上ではボール奪取の部分で昨季の水準を維持できていないことが分かります。これは主観的な印象とも合致しており、とくに球際のインテンシティが低下している印象が顕著です。
こちらはまだデータが出ていなのですが、今季のヴィッセルはややチームのコンパクトさが保てず、選手間の距離が間延びするシーンが見られます。適切な距離感を保つことは、ゾーンディフェンスの基本ですが、この辺りの整備が進むと、ボール奪取の傾向も強まっていくのではないでしょうか。
まとめ
今回は、2020年序盤のヴィッセルのチームスタイルについて、昨季のデータと比較しながら考察を行ってみました。
個人的に気になっていたポイントにフォーカスして考察を行いましたが、テンポの良いパス回しとインテンシティの復活、共通するのは質の高いポジショニングではないかと感じています。とくに今季は過密日程で、フィジカルコンディションを整えるのが難しい状況です。厳しい連戦を乗り切っていくためにも、チーム全体でポジション取りの意識を再確認してみては…そんな感想を持ちました。
データの専門家ではないため、サッカー好きが楽しむ材料程度に捉えていただけると幸いです。
今後はまた違ったデータを活用した考察にもトライしてみたいと思います。それではまた!