J1マッチレビュー2020 PR

【マッチレビュー】Jリーグ第11節 ヴィッセル神戸vs柏レイソル

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前節鹿島アントラーズ戦、ロスタイムに同点ゴールを奪われて引き分けに終わったヴィッセル。

この日はネルシーニョ監督率いる柏レイソルが相手です。絶好調の怪物オルンガを擁する難しい相手に、どう対応していくのか。

注目度の高い一戦をレポートします。




【両チームのスタメン】

試合前のインタビューで、少数のスタメン入れ替えを示唆していたフィンク監督。

その言葉通り、ヴィッセルは前節から2人選手を入れ替えてきました。最終ラインを4枚にし、右SBには藤谷を起用。前節欠場していたサンペールがアンカーに入り、4-3-3の布陣を採用しました。小田は2試合連続のスタメン起用です。

一方の柏レイソルは、2試合続けてまったく同じスタメン。最前線には6試合連続ゴール中のオルンガが待ち構え、二列目から瀬川・江坂・仲間がチャンスをうかがいます。

【前半】

ヴィッセルは立ち上がりから、ボールを繋ぐ意識を高く持ってゲームに挑みます。

4-3-3のワンアンカーを採用したことでパスコースが縦に生まれ、前節よりも流動性の高いボール回しができていました。

レイソルはこれに対して、江坂がサンペールのパスコースを切るようなポジショニングを取り、中盤では大谷、ヒシャルジソンを中心に激しいマークを実行。ネルシーニョのチームらしいインテンシティの高い守備で、中央に厚いブロックを築きます。

互いに強みを発揮した緊張感あるゲームになるかと思いきや、ここからヴィッセル側にアクシデントが発生します。

試合開始直後、タッチライン際でイニエスタが相手選手と接触した際に右足首を負傷。そのままプレーを続行したものの、前半22分に自らベンチに合図を送り交代を要求。そのまま安井と交代してしまいました。さらに29分には、フェルマーレンが負傷して渡部と交代。前半開始から30分足らずで、早くも2回の選手交代を強いられるスクランブルとなってしまいます。

しかし、この緊急事態に途中投入された安井と渡部は、ともに落ち着いたプレーですぐさまチームにフィット。渡部はCBという難しいポジションながらベテランらしい安定感と、急速な成長が見られる足下の技術でしっかりチームに貢献。安井はイニエスタと同じポジションで、サンペールと共に攻撃をオーガナイズ。郷家や小田といった若手メンバーとはとくに良質な関係を披露し、チームにリズムを加えました。

35分には細かいパス回しからサンペール→郷家と繋がり決定機に。しかしここではレイソルのDF2人とGKの中村を加えた3人が身体を投げ出してブロックに入るなど、相手の粘り強い守備が上回ります。41分にも小田がCKの流れからシュートを狙うもののゴールならず。ただ、着実に相手ゴールへ迫るプレーが生まれていました。

すると前半終了間際の45分。右サイドで小田がスピードに乗ったドリブルで持ち運ぶと、ボックス内に侵入しマイナスのクロス。

中央に走り込んでいた郷家が右足で合わせ、先制ゴールを奪いました。

小田と郷家の若手コンビで奪った得点ですが、ボックス内ではドウグラスが相手マーカーを引きつけスペースを生み出していた点も見事でした。郷家はこれで2試合連続ゴール。

左WGというメインポジションでの起用ではないものの、中盤の選手とパス交換に参加しつつ、最後の局面では自らシュートに絡むなど試合ごとに存在感を高めています。昨シーズンはやや不完全燃焼に終わりましたが、今季はそのポテンシャルをいま一度開花させ始めているように映ります。

【後半】

1-0で折り返して迎える後半戦。

レイソルは左SHの瀬川に代えて、マテウス・サヴィオを投入すると、この交代策がすぐに結果に結びつきます。

46分。左SBの三丸がボールを持つと、交代で入ったサヴィオに一度預けてサイドをオーバーラップ。

リターンパスをもらうとタッチラインギリギリの深い位置から左足でクロスを供給。ニアサイドのオルンガは潰れるものの、ボールはそのまま中央に届き右SHから走り込んでいた仲間が頭で合わせてゴール。後半開始わずかで同点に追い付きました。

推測ですが、ネルシーニョは後半立ち上がりの得点を試合前から狙っていたように感じます。

精神的なエアスポットが生まれやすい時間帯、後半立ち上がりに交代カードを切ることでヴィッセル守備陣に混乱を与えつつアグレッシブに攻める。三丸のオーバーラップや仲間のダイアゴナルランはそうした積極性のあらわれで、しっかり結果に結びつけて見せました。

同点に追い付かれたものの、ヴィッセルの攻撃は一貫しています。複数人がボールを細かく繋ぎ、相手を崩しながら得点を奪うということ。

この複数人という意味では、前半の郷家、安井、小田といった若手に加えて、徐々にドウグラスもボールに絡むシーンが増えていました。レイソルがサヴィオをトップ下のように配置し、両サイドが高い位置を取ってプレッシングをかける場面でも、最終ラインは落ち着いて対応。61分にはGKの飯倉が巧みな足技を披露してボールを繋ぐなど、ヴィッセルらしさは随所に感じられました。

ただ、この辺りから選手間の距離が間延びするシーンが増え、疲労の色が濃くなっていきます。やはり夏場の暑い環境で中2日のゲーム。運動量を保てていたのは山口くらいで、スタミナが豊富な酒井も守備の戻りが遅れる場面が見られました。

加えて、この日はすでに前半に2回の交代枠を使っています。本来であれば早めにフレッシュな選手を投入したい場面でしたが、残り時間を考えると交代時間を遅らせる判断はベターでした。

ヴィッセルは苦しい状況の中でよく戦っていました。

しかしこの粘りを打ち破ったのが、怪物オルンガです。

76分、オルンガが途中交代の戸嶋から受けたパスは、ややトラップ乱れます。CB渡部の足下に転がったボールは50-50の状況になりますが、オルンガがパワーでボールを奪い取るとボックス内に進入。大崎が距離を詰めながら左腕を使い懸命に止めにかかりますが、そのまま強引に突破を図り最後は左足で強烈なシュート。ボールはネットに突き刺さり、リーグ戦7試合連続となるゴールで逆転に成功しました。

オルンガの過去のゴールシーンは何度も映像で見ていましたが、実際にヴィッセル戦で決められるとあらためて強烈な「個」の力を見せつけられた気持ちです。

追う展開となったヴィッセルは、最後の交代枠で小川、初瀬、古橋を投入。小川はRSB、初瀬はLSBでそれぞれ起用。古橋は負傷から復帰後初のプレーで、前線で自由に動きながら攻撃的な役割を任されます。

86分。左サイドから初瀬→安井→初瀬とボールが渡り、ゴール中央へ低いクロス。このボールにドウグラスが右足で丁寧に合わせますが、ここはレイソルのGK中村がセーブ。このシーンを含めて、中村は随所で好セーブを連発。やはり日本代表に名を連ねるプレイヤーだけに、存在感は抜群でした。

この決定機は逃しましたが、続くチャンスはしっかり奪って見せました。

89分。サンペールからボールを受けた安井が一瞬間を作り中央にドリブル。ニアで動き出した古橋にパスを出すかと思いきや、右足アウトサイドで中央に待ち構えていたドウグラスへパス。これをドウグラスが左足で冷静に決め、同点に追い付きました。

得点は認められましたが、このシーンをリプレイで見るとドウグラスがオフサイドポジションに位置しているように映ります。レフェリーの判定は尊重すべきですが、ヴィッセルにとってはラッキーだったというのが個人的な見解です。

ただ、安井はボールを受けて相手が詰めてこないと判断しドリブルを選択。古橋が連動して動き出すことで相手を釣り出し、安井の選択肢を広げました。ドウグラスの冷静さを含め、一連の流れはヴィッセルらしい美しい攻撃でした。

ロスタイムの表示は5分。試合の流れはヴィッセルにあり、ホームゲームです。前節鹿島戦とはシチュエーションが違うだけに、攻撃に出る判断は正解といえます。ただ、最後の得点を奪ったのは柏レイソルでした…。

94分。左サイドでスローインのボールを受けた三原が、ゴールに向かう軌道のボールを蹴り込みます。

レイソルの戸嶋が斜めに走り込みキーパーとDFラインの間でフリーで合わせようとしますが、一歩届かず。しかしこの動きが飯倉のブラインドになり、ボールは直接ゴールイン。

判定は三原のゴールとなり、レイソルが勝ち越しに成功しました。

ヴィッセルは完全に足が止まってしまい、三原にフリーの状態でボールを蹴らせてしまいました。同点ゴールを奪われながら、最後まで走り切ったレイソルの粘りが生んだゴール。残念ながら、勝利の女神はレイソルに微笑む結果となりました。

決して悲観する内容ではない

ハードな試合展開の中、2試合続けてのロスタイムでの失点。前回は引き分けでしたが、今回は敗戦を喫してしまい、ダメージは大きいといえます。

ただ、内容を見れば決して悲観するものではありませんでした。

とくにイニエスタ、フェルマーレンという攻守のキーマンを早々に欠いたにも関わらず、チームとして共通意識を持ち攻撃的なサッカーを展開していた点は評価に値します。

起用されている若手メンバーの成長は著しく、小田や郷家はこのままスタメン争いに参戦してもおかしくありません。

あと一歩をどう形にするか

強いて課題を指摘するなら、このところの失点シーンは守備の寄せがあと一歩遅れている場面が目立ちます。

ただ、これは過密日程と酷暑の影響も考えられ、運動量だけでカバーするには、限界があるでしょう。となると、求められるのはより質の高いポジショニング。選手間の距離をしっかり意識し、守備へのアプローチやパスコースを消す。結果とし、この意識が攻撃の質を向上させます。

なかなか結果が出ない状況に加えて、過密日程でメンタルの切り替えが難しいシーズンです。今はサポーターも、悪い空気に引っ張られない意識を持つことが重要だと感じています。

一戦一戦、ポジティブな要素をしっかり確認しつつ、チームを後押ししていきたいですね!




ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。