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【マッチレビュー】J1第10節 ヴィッセル神戸vs北海道コンサドーレ札幌

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大型連休の札幌ドームで開催されたJ1第10節、ヴィッセル神戸vs北海道コンサドーレ札幌の一戦。多くのサポーターが駆け付けたゲームは、3連勝中のコンサドーレと、4連敗中のヴィッセルという好対照なチーム状況でぶつかり合うゲームとなりました。

両チームのスタメン

ヴィッセル神戸,コンサドーレ札幌,スタメン

この日、ホームのコンサドーレはお馴染みの3-6-1のシステム。シャドーのポジションは好調のアンデルソン・ロペスが負傷欠場。スタメンには荒野が起用されました。

一方のヴィッセルは、大きくメンバーを入れ替えてきます。注目のイニエスタとポドルスキは残念ながらベンチ外。両選手のポジションには郷家と田中が起用され、その他にも三田が先発復帰、LSBの橋本とCBの宮はリーグ戦初スタメンと、前節から5人を入れ替えてきました。フォーメーションもビジャと田中を2トップにする4-4-2を採用しています。

【前半】互いに集中力を切らさない見応えある45分

前半、主導権を握ったのはコンサドーレ札幌でした。豊富な運動量と3人以上が絡む完成度の高い連携で攻撃を繰り出すと、幾度となくヴィッセルゴールを脅かします。

対するヴィッセルも、初スタメンとなった宮とダンクレーを中心に、球際で強固な守備を披露すると、機を見て前線のビジャや古橋がゴールを狙います。

両チームとも集中した好ゲームが展開されました。

4-4-2システムを採用して守備の安定を目指すヴィッセル

この日のヴィッセルは、リーグ戦では初めてとなる4-4-2のフォーメ―ションでスタートしました。中盤はアンカーに山口を据え、右に古橋、左に郷家、トップ下に三田を置きます。

システム変更の狙いは守備組織の安定。ヴィッセルはボールを奪われると、両サイドと三田が下がりブロックを形成。2ラインを敷くことで、選手間の距離を短くし組織的に守る姿勢を見せました。

狙いはコンサドーレの両ウイングに対して、2人で対応すること。LSBに橋本を起用したのも、サイドでの守備強度を高める狙いがあったのでしょう。

遅攻と速攻を使い分けるコンサドーレの完成度の高さ

しかし、コンサドーレは中央のミスマッチを利用して、攻撃の主導権を握ります。

ポイントとなったのは、コンサドーレの2シャドー。ヴィッセルの守備組織は今季初の並びにしては上手く機能していました。ただ、カウンターの場面では三田と山口が縦関係になってしまい、チャナティップと荒野の2人が山口に両サイドにポジショニングすることで自由に動き回れます。

また、コンサドーレは遅攻と速攻を巧みに使い分けて攻撃を組み立てていました。ボランチの宮澤がタスクを握り、鈴木のポストプレイ、両サイドの単独突破、バックラインを含めたビルドアップなどなど…変幻自在の攻撃を繰り出していきます。これだけ完成度の高い攻撃を仕掛けられれば、いくら人数が揃っていても「即席」の守備組織では対応できません

それでもヴィッセルは球際で集中力を切らさず、粘り強く対応しゲームのクオリティを保つことで、見応えのある前半45分を披露してくれました。ゲームは0-0のまま、後半へ向かいます。

【後半】ヴィッセルの完璧な23分と、落とし穴

前半、攻撃でリズムを作れなかったヴィッセルは、後半開始からシステムを変更します。このシステム変更が見事にハマると、前半とはガラリと変わりヴィッセルペースの試合展開に。先制点を奪い完璧なゲームプランを進めるヴィッセルでしたが、思わぬ落とし穴に足を取られてしまいます

4-2-1-3へのシステム変更で攻撃にリズムが

ヴィッセル神戸,後半,フォーメーション
ヴィッセル神戸 後半開始からのシステム

後半からヴィッセルは、両サイドをより前気味に置いた4-2-1-3のシステムを採用してます。真ん中にビジャ、両ウイングには田中と古橋を置き、中盤はトップ下に郷家、三田と山口がダブルボランチ並ぶような形です。

このシステム変更により、ヴィッセルはマイボールで主体的にゲームを進められるようになりました。三田と山口が並ぶことで、札幌の2シャドーをけん制。さらに両ウイングが高いポジションを取ることで、菅とルーカス・フェルナンデスのサイド攻撃を封じます。

また、三田が前半より低い位置から組み立てに参加することで、長所でもある推進力を発揮。この形は前節の川崎戦終盤でも機能しており、現状でもっともヴィッセルの攻撃に効果のあるシステムと言えるでしょう。

ビジャのPKで先制するも、66分の橋本負傷交代で流れが…

ヴィッセルの先制点はPKからでした。

63分、右サイドにダンクレーから西→古橋とボールが繋がると、西がハーフスペースへ飛び出します。古橋から西にボールが渡り、ボックス内で西が倒されPKを獲得。これをビジャが決めてヴィッセル神戸が先制点を奪います。

システム変更から素晴らしいゲームを披露していたヴィッセル。いよいよ長い連敗から抜け出せるかと期待が膨らみますが、思わぬ展開から流れが変わります。

66分。コンサドーレの右サイド、L・フェルナンデスのクロスをブロックした橋本の顔に、ボールが直撃します。橋本は脳震盪のような症状でその場に倒れ込み、負傷交代。意識もあり深刻な状態ではありませんが、ここまで老獪な守備と左効きを生かした組み立てで「効いていた」だけに、ヴィッセルとしては痛い交代となります。交代で入ったのは本職がCBの大崎。

結果として、この負傷交代がこのゲームの結果を大きく左右しました

セットプレーから進藤がビューティフルな同点弾

コンサドーレの同点弾は、そのわずか数分後の出来事でした。

右サイドでセットプレーを得たコンサドーレは、福森が低いボールを蹴り込みます。このボールはダンクレーがヘディングで対応しますが、クリアしたボールが味方選手の田中に当たり中央方向へ飛ぶと、コンサドーレの進藤がダイレクトでバイシクルシュート。まさに「スーパー」なビューティフルゴールで、コンサドーレが同点に追い付きました。

ヴィッセルは橋本の負傷交代でやや混乱した雰囲気の中、クリアしたボールが味方に当たった流れで失点するアンラッキーな展開。進藤の曲芸的な決め方も重なって、一気に重苦しい雰囲気が包まれてしまいます。

終始存在感を魅せていた鈴木武蔵が逆転弾

同点弾を奪って息を吹き返したコンサドーレは、前半の勢いを取り戻し攻勢を仕掛けます。ヴィッセルは連敗中のメンタルもあってか、後手後手の展開に。

75分、細かいパスの繋ぎでボックス内に進入すると、宮澤が粘って途中交代で起用されていたサイドの早坂へ。早坂は柔らかい浮き球のボールを送り、中で動き直していた鈴木武蔵が飛び込むような形でヘディングシュート。見事に逆転ゴールを決めました。

この日の鈴木は前半からワントップとしてポストプレーやプレスを献身的にこなしながら、チャンスでは遠目からミドルを狙うなど存在感あるプレーを披露していました。最終的にはチームに勝利を呼び込む得点を奪ったとあって、ストライカーとしての風格すら感じさせてくれました。

追いかける展開となったヴィッセルは、ウェリントンや小川を起用して反撃に出ます。ロスタイムには立て続けに得点チャンスを迎えますが、コンサドーレのク・ソンユンがファインセーブを見せこのまま試合終了。2-1での逆転劇に、35,000人弱が詰めかけた札幌ドームは素晴らしいボルテージでチームの勝利を称えました。

ヴィッセルは泥沼の5連敗…

敗れたヴィッセルは、これで泥沼の5連敗。さすがにクラブ上層部も動揺を隠しきれず、三浦SDはメディアに対して「これだけ勝てないと苦しい」とコメントを残しています。

三浦SDのコメントには違和感を覚える

しかしこの発言には違和感を覚えます。そもそもこの混乱の原因となったのは、リージョの契約解除が大きく影響しています。契約解除の詳細は明らかになっておらず、リージョ側に問題があった可能性も捨てきれませんが、現状を見ればクラブ側に問題があると推測されて仕方ないでしょう。

ポドルスキのSNSでの欠場問題も、昨年の高橋峻希への処分と比べればあまりに落差があり、チームのガバナンスが機能していないのは明白です。こうした状況下で会長がバルサとの親善試合にうつつを抜かしている姿は、滑稽に映ってしまいます。

選手たちは、本来必要のないプレッシャーを背負う

一方で選手たちは状況を改善しようとハードワークを続けているのは確かです。この日のゲームにしても、決してプレーの内容が悪かったとは言い切れないでしょう。プロフットボーラ―が結果で評価されるのは致し方ないですが、本来背負う必要のないプレッシャーを、クラブの失策から背負わせれている点は看過できません。

今後もリーグは鹿島、横浜、湘南と難しい相手が続きます。怪我人も続出しており、厳しい戦いが予想されます。選手たちの犠牲のもと体を成している現状ですが、すでにギリギリの状況に追い込まれている危機感がクラブにあるのか─

いささか厳しい論調になりましたが、ヴィッセル神戸サポたちの不安は尽きません。

ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。