J1マッチレビュー2019 PR

J1第15節 ヴィッセル神戸vsFC東京

ヴィッセル神戸のマッチレビュー
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代表ウィークの期間に、吉田監督の退任とフィンク新監督の就任が発表されたヴィッセル神戸。一時はベンゲルの就任も噂されましたが、チームの再建を託されたのはドイツ人指揮官でした。

この日の相手はリーグ首位のFC東京。新監督がどんな采配を振るうのか、注目のゲームです。

両チームのスタメン

ヴィッセルvsFC東京 スタメン

この日まず注目されたのが、ヴィッセルのスタメンでした。

フィンクは初采配のこの試合、4-4-2のソリッドなフォーメーションを選択。これまでのリージョ、吉田両監督からの違いとして、イニエスタのボランチに起用が挙げられます。また、両サイドハーフには小川と三田を置き、前線はビジャとウェリントンのツートップを採用してきました。

一方のFC東京もヴィッセル同様4-4-2の並び。代表招集で不在の久保建英に代わりに大森が右サイドに。怪我で欠場となる永井のポジションには、長身の矢島がスタメンに名を連ねます。

【前半】神戸が主導権を握る。FC東京は様子見の姿勢

前半はフィンクが就任したヴィッセルが主導権を握ります。FC東京としては、相手指揮官がどのような戦術を採ってくるのかほぼ情報がなく、様子見の姿勢といったところでしょうか。

両SBを高く置き、イニエスタ中心で組み立てる

この日のヴィッセルの攻撃は、ボランチに起用されたイニエスタが中心を担っていました。

ヴィッセル フォーメーション

まずディフェンスラインからイニエスタがボールを受けると、高いポジションを取る両SBを含めて攻撃を組み立てます。両SBの攻め上がりにかぶらないように、三田と小川はやや内側に絞るようにプレー。利き足と逆のポジションで両選手を起用したのは、この動きを意図したものでしょう。

中盤に厚みが生まれることで、イニエスタはフリーの状態でボールを持つことができます。ボランチを組んだ山口は、彼の衛星のようにプレーし、守備面の負担を一手に引き受けていました

一流の指揮者がタスクを振るえば、攻撃は活性化します。前線のビジャとウェリントンはそれぞれ「裏を狙う動き」と「ハイボールの処理とポスト役」という持ち味を存分に発揮していました。

攻守のトランジッションが整理されている

イニエスタ中心の攻め以外にも、フィンクのカラーが伺えるポイントがありました。それは、攻守のトランジッションが整理されていたこと

この日のヴィッセルは序盤から攻守の切り替えが素早く、ボールロスト後には素早くプレッシングを仕掛けて奪取を狙います。とくに目立っていたのが小川とウェリントンのプレーで、両選手とも献身的な動きで何度もピンチの目を潰していました。

このあたりは両SBの高いポジショニングも関係しており、相手陣内で奪われた場合は、数的優位の状況を作れます。「守備のための守備」ではなく、「攻撃のための守備」という意図が伺えます。

カウンター対策はまだ未完成

攻守にポジティブな要素が多い前半でしたが、FC東京も黙っていません

相手の出方を見るためにしっかりリトリートしてブロックを形成しながら、チャンスと見るやお得意の高速カウンターを発動。とくにディエゴ・オリベイラは抜群の存在感を魅せていました。このオリベイラの動きに連動するように、矢島、東、大森らが次々と顔を出し、チャンスを生み出します。

ヴィッセルは相手陣内のプレスがはまり、カウンターを防いでいればOKなのですが、ひとたび攻め込まれると対応に拙さを見せていました。このあたりは、開幕から続く課題といえ、今後の守備組織を構築する上でのポイントとなってくるでしょう。

【後半】主役の一撃と両指揮官と攻防

両チームの強みが出た前半は、0-0のままハーフタイムへ。スコアに動きがあったのは、後半の立ちあがりでした。待望の「主役」に一撃に沸くヴィッセルサポーター。

一方試合が進むごとに、FC東京の長谷川監督とフィンク監督の駆け引きも熱を帯びていきます。

狙いすましたイニエスタのシュートで先制

49分、シュートシーンの流れから右サイドの西へボールが渡ります。

西はじっくりボールをキープしてタイミングを伺うと、逆サイドでフリーになっていたイニエスタへクロス。ぴたりとトラップしてボールを置くと、イニエスタは冷静にキーパーの位置取りを見極めニアサイドにシュート

柔らかな軌道を描いたボールが見事ゴールに吸い込まれ、ヴィッセル神戸が先制点を奪います。イニエスタは今季リーグ戦初ゴール。高い技術力と冷静さから「ゴールにパスをする」ような美しいゴールでした。

実はこのシーン、最初にイニエスタがシュートを放った流れから、アシストを決めた西へとボールが渡っていきます。西は中央に人数が揃っているにも関わらず、あえて右サイドで時間を使い、イニエスタがオフサイドポジションから戻ってくるのを待っていました。そこにぴたりとクロスを届ける西の老獪さも、素晴らしいプレーだったと言えるでしょう。

ポジションを変更して反撃に出るFC東京

追い掛ける展開となったFC東京は、ボランチの高萩をやや前のポジションに上げて攻撃のタクトを握らせます。

52分には、キム・スンギュのパスミスから決定機を迎えるも、矢島のシュートはスンギュ自らセーブ。64分にはナ・サンホとユ・インスの両アタッカーを投入すると、さらに攻撃のテンションがアップ。とくにサイドの攻防ではFC東京が優勢となります。

フィンクはこの展開を受けて、三田に代えて古橋を起用。故障明けの古橋は、持ち味のスピードと献身性を発揮。疲れが見え間延びするチームのために、何度も長い距離をスプリントします。この動きが抑止力となり、サイドの攻防がやや落ち着くかに見えました。

すかさず次の一手を投入してチャンスを作る

しかし長谷川監督は、82分に特別指定選手の安倍柊斗を高萩に代えて投入し、チームにさらに刺激を加えます。安倍は投入直後にアグレッシブなプレーを見せるなど、リーグ戦デビューとは思えない躍動ぶりでした。

選手交代でまた動揺が見られたヴィッセルは、自陣右の深い位置でフリーキックのチャンスを与えてしまます。FC東京のキッカーはレフティの小川 諒也。キーパーの手前、嫌な位置にボールを蹴り込むと橋本が頭でこするようにシュート。決まったかに思えたボールは、ポストを叩きビッグチャンスを逃してしまいます。

最後まで粘り強く守ったヴィッセルが勝ち点3を奪取

ポストに救われたヴィッセルは、87分にビジャに代えて郷家を投入。古橋がフォワードへ移り、郷家は中盤でプレー。さらにロスタイムの91分には、イニエスタに代えてセンターバックの渡部を投入すると、スリーセンターバックにシステムを変更して守りを固めます。

同点を狙うFC東京の猛攻を受けつつも、球際では体を張ってブロックを見せるなど粘り強く守った神戸。このまま試合は終了し、1-0で勝ち点3を奪いました。

首位FC東京は、さすがの組織力を披露していましたが、欠場した久保と永井の穴が大きかったと言えるでしょう。カウンターに脆さをみせる神戸に、前線でオリベイラと永井の2人が揃っていれば、展開は変わっていたかもしれません。

新指揮官の初陣を勝利で飾る

ヴィッセル神戸は、新指揮官とフィンクの初陣となったこの試合を、見事勝利で飾ることができました。リーグ首位のチームのアウェイ戦での勝ちは格別。課題とされている守備面も、この日はクリーンシートで終わるなど収穫の多い一戦となりました。

 

試合後の選手たちの表情も実に晴れやかです。ちなみにこの撮影シーン、一番テンションが高かったのがフィンク監督だったそうです(笑)

一貫していたのは自分たちの「強み」をいかす戦い方

初采配が注目されたフィンク監督でしたが、この日の試合で一貫していたのは、チームの「強み」をしっかりと押し出した戦い方をするということ

イニエスタが自由にプレーできるよう、山口や三田、小川がしっかりサポートし、守備ではボールロスト後の即時奪還を目指すことで、ポゼッション力を失わない戦術が採用しています。

また、会見でも次のように語るなど、選手の持ち味をしっかり引き出すことを主眼に置いている指揮官のようです。

ウィークポイントがあまり無いチームなので、相手にフォーカスするよりは我々のストロングポイントにフォーカスすることに重点を置きました。
アンドレス イニエスタ選手がいるので、彼のボールの支配率、それをいかしたプレー、そして比較的サイド攻撃からの失点が多かったのでそれを利用するつもりでした。

ヴィッセル公式HPより https://www.vissel-kobe.co.jp/match/game/?gid=20190100010620190615&type=comment

今シーズンはウェリントンとビジャがゴールを取ってくれているので、彼らを同時にプレーさせたいということもありましたし、2人のコンビネーションも上手くいったと思います。

モチベーターとしての顔も覗かせ、第一印象は〇

一方で、試合中は常にテクニカルエリアまで歩み出て、選手に細かく指示を送っています。ゴール後にスタッフはもちろん控え選手とハグ。試合終了後も明るい表情で、サポーターの挨拶に出向くなど、モチベーターとしての一面も覗かせてくれました。

試合に勝利したということもありますが、指揮官として魅力がある存在であることは確かでしょう。第一印象だけを見れば、非常に好感が持てる監督と言えます。

もちろん、監督交代は一種のショック療法であり、今はまだ「薬」の効果が出ている状態。今後はより細かな守備組織の構築や、サンペールやポドルスキといった好タレントをどう組み込むかといった難題が待ち構えています。

戦術はもちろん、フィンクが今後どのようなマネージメントを見せるのかにも、注目していきたいですね!!!

ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。