コパ・アメリカ2019 PR

コパ・アメリカ2019 第1戦 日本vsチリ

コパアメリカ
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ブラジルで開幕した、コパアメリカ2019

日本も招待国として2度目の出場をはたしている今大会、初戦の相手は南米のチリ。ビダルやサンチェスら錚々たる顔ぶれが揃う強敵に対して、日本はどう挑んだのか。

今回は、フットボールベアー初の日本代表戦をマッチレビューしたいと思います。

【前半】アグレッシブな日本と様子見のチリ

前半開始から、日本代表は前線からのプレスを仕掛けるアグレッシブな姿勢を見せます。

一方のチリ代表は、ややスローテンポで様子見の入り方。これは、対戦相手の日本がどのような戦術で挑んでくるのか情報がなかったことが理由でしょう。

不規則な招集メンバーとなったサムライブルー

今回のサムライブルーは、フルメンバーが収集できず、一部の欧州組とJリーグの五輪世代(各クラブ1名まで)という不規則な構成となっています。そのため、チリのスタッフはもちろんのこと、日本メディアもどう選手たちが戦うのか、予想できない状況でした。

コパアメリカ チリ スタメン

システムは4-2-3-1を採用。3バックの起用も予想されましたが、選手たちが戦い慣れた4バックを選択することで、少しでも連携面での不安を払拭したかったのでしょう。キーパーには19歳の大迫がA代表初スタメン。CBは植田と冨安の両欧州組がコンビを組み、両SBには原と杉岡が名を連ねます。ボランチはキャプマークを撒く柴崎と中山、2列目は左に中島、右に前田を置き、トップ下には注目の久保建英を抜擢しました。ワントップは法政大学の上田が務めます。

チリ代表は、アンカーを置く4-3-3の布陣。長身のボランチのプルガルを底に、ビダルとアランギスの2人がセンターハーフを務めます。サンチェスは左のウイングに位置し、ワントップにはバルガス。全体的に年齢層が高く、若手中心の日本とは対照的なメンバーと言えます。

守備の強度は高いが攻撃は即興性に頼る

日本は運動力を多くし、球際でも積極的にボールを奪いに行くことで、格上のチリ相手に上々のスタートを切りました。

しかし、ボールを奪ってからの攻撃は、中島や久保の即興性に頼るシーンが多く、チームでの狙いが見えてきません。例えば、右サイドの前田やワントップの上田を走らせる、あるいはサイドの個人技で勝負しつつ攻撃の枚数を増やして攻め込む、といった意図は伺えませんでした。

立ち上がりこそ、フリーでボールを持った久保や中島のプレーがやや注目されましたが、連動性を欠いた攻めでは老獪なチリのディフェンスラインを破るには至らないでしょう。

のらりくらりと調子を上げていく「南米チリ」のお家芸

チリは日本がちぐはぐな攻めを見せている間に、徐々に調子を上げていきます。

日本の中島と杉岡の右サイドコンビに弱点があると見るや、執拗にこのポイントを攻撃。サイドに引き付けておいて、折り返しビダルを使うなど変幻自在な攻めを披露します。

のらりくらりと調子を上げ、ここぞで仕留めに掛かるのは南米のお家芸。結局、前半41分セットプレーからプルガルに打点の高いヘッドを決められて失点。攻める時間帯にきっちり得点を奪ってくるあたりは、さすがです。

【後半】チリが怒涛の得点ラッシュ。日本はバランスを著しく欠く

前半を0-1で折り返した日本でしたが、後半もチリペースで試合は進みます。

54分にはバルガスが追加点を奪うと、82分にはサンチェス、83分にはバルガスにこの日2ゴール目を奪われるなど、怒涛のゴールラッシュを決められました。

日本は序盤こそ効いていたプレッシングが機能せず、組織として攻守のバランスを大きく欠いた印象でした。

中山のプレーとポジショニングの曖昧さ

いくつか守備の面で気になった点を上げていきましょう。

1つは、ボランチで起用された中山のプレー。中山は左利きの守備的なプレイヤーで、ボランチとセンターバックに加え、左サイドバックとしてもプレーできる万能型の選手です。五輪世代でも期待の逸材ですが、この日のプレーは厳しい評価を下さなければならないでしょう。

まず、ポジショニングが中途半端なため、チリのツーセンターハーフを自由にプレーさせてしまっていました。本来は攻撃に比重を置きたい柴崎がカバーリングに労力を割くことで、中盤の構成力が低下。柴崎は低いポジションでしたボールを持つことができず、決定的なパス数えるほどでした(そのうち2本が上田への決定的なパスだったのはさすが)。

また、中山はボールを奪いにいくと、そのまま高いポジションに留まっていることが多く、守備のリスクを高める結果となってしまいました。原因がコンディションにあるのか、メンタルにあるのかは定かではありませんが、自分の中でも迷いながらプレーしているように映ったのは気掛かりです。このあたりを、森保さんを含めスタッフが上手くフォローしてあげると良いのですが。

単発のプレスで連動性がない

チームのプレスに関しても、個人が前線で単発的に追いかけるシーンが多くみられました

運動量の多い前半はそれでも大丈夫だったのですが、後半は明らかにペースダウン。上田や久保がふと思い出したように追いかけるだけでは、効果は薄いでしょう。

また、杉岡と原の両サイドバックは、個人の能力面でチリの選手たちとの差を見せつけられていました。サンチェスは決して好調ではないものの、したたかな動きでマークを外し、上手くファールを誘うなど余裕のあるプレー。ベテランとして右ウイングで起用されたフエンサリーダは、アランギスやイスラと上手く連動しながら、右サイドを制圧していました。

日本のプレスの狙いはサイドでボールを持たせ、前後で挟み込むことにありましたが、サイドバックが守備に追われる展開ではこの狙いも難しかったでしょう。連動性を欠いたプレスは、守備だけでなく、攻撃にも影響を与えます。この日の日本が得点を奪えなかった要因の1つでしょう。

上田のプレーをどう評価するか

さて、選手の個人名をあげるなら、4度の決定機をものにできなかった上田も取り挙げなければなりません。

賛否が分かれる内容でしたが、個人的には評価に値するプレーだったと感じています。まず、数少ないチャンスをシュートにまで結び付けるボールの受け方は素晴らしいものがありました。もちろんフォワードとして結果で評価される点は承知していますが、ポテンシャルの高さは十分に感じさせくれたのではないでしょうか。

現在法政大学に所属する上田ですが、やはり一瞬のスピードや判断力は、ハードな環境に身を置くことでしか磨かれないでしょう。その意味では、今後Jリーグや欧州リーグへステップアップする中で、無意識化のプレースピードが上がっていけば自然と結果は付いてくるでしょう。できれば、今大会中は途中出場からでもプレーする機会を与えることで、成長を促したいものです。

残念ながら育成に軸足を置く大会となる

さて、この日のチリ戦を見る限り、今回のコパアメリカは「育成」に比重を置く大会となりそうです。

これだけ若いメンバーが主体で、連携面も未熟となればチームとして結果を求めるのは酷と言えます。

A代表の強化と、五輪代表の強化がどっちつかずになっている点は気掛かりですが、大会がスタートしてからそれを論じても仕方ありません。ここは若手へ経験値を高めるという視点で、個人のプレーにフォーカスした観戦スタンスがベターではないでしょうか。招集されているメンバーは、Jリーグや欧州でも高いポテンシャルを持っているメンバーだけに、新たな発見に期待しましょう!



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ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。