トリニータ戦で見えた「迷子」のヴィッセル神戸

トリニータ戦で見えた「迷子」のヴィッセル神戸

5月8日に開催された、ルヴァンカップ第5節の大分トリニータ戦は、先制点を奪いながらも逆転されるダメージの大きいゲームとなりました。

この試合ではっきりと見えたのは、現在のヴィッセルは「迷子」の状態に陥っていることです。

スタメンに見えたヴィッセルの本気度と危機感

ヴィッセル神戸,大分トリニータ,スタメン

この試合のヴィッセルは、4日前のリーグ戦でフル出場した山口と宮をスタメンで起用してきました。ここまでのルヴァンカップはほぼサブメンバーだけで戦ってきただけに、吉田監督の本気度が伺えます

一方で、公式戦5連敗の悪い流れを、なんとしても食い止めなければならないという強い危機感のあらわれとも言えるでしょう。

負傷者が多いサイドバックには、右に大崎、左に郷家を起用。メンバーからは3バックの布陣も予想されましたが、リーグと同じ4バックを採用してきました。

2戦連続の逆転負けはダメージが大きい

結果から言えば、この日のヴィッセル神戸は前半に山口のゴールで先制するも、後半トリニータに2点を奪われ逆転負けを喫しました。逆転負けは、リーグのコンサドーレ戦に続いての展開とあって、選手たちへのダメージは想像以上に大きいと予想できます。

「また負けるのでは」という心理状態

現在のヴィッセルには、チームとして勝つイメージがまったく描けてないでしょう。これは連敗中のチームには多くみられる傾向で、些細なミスや失点で必要以上に動揺してしまいます。「また負けるのでは」という心理に一気に引き込まれる状態です。

コンサドーレ戦はまさにその典型で、同点に追い付かれた途端ピッチ上の選手たちは突然ナーバスなプレーを見せ始めました。この日のトリニータ戦も、選手たちは迷いながらプレーしているように映ります。

とくに逆転ゴールはトリニータのハイプレスが上手く「ハマった」シーンでしたが、今のヴィッセルの状況を如実に表しているような失点でした。

いまのヴィッセルは戦術的な拠り所がない「迷子」

本来、こうした不安定な状況での道しるべとなるのが戦術です。より近い言葉を探せば、流行りの「ゲームモデル」と言い換えられるでしょう。

試合をどう進め、どう修正し、どう完了させるのか。

こうした共通意識が、吉田監督の就任以降まったく見られなくなりました。リージョ政権では、良くも悪くもゲームモデルを最優先したチーム作りでした。そのため、ミスが生まれても修正すべきポイントが明確であり、次のゲームへ向けてのプランを練りやすかったように思います。

しかし、いまのヴィッセルは戦術的な拠り所を見失った「迷子」のよう。攻撃の共通意識が乏しく、アイデアに欠けています。前半はスタミナがあり運動量でカバーできますが、中盤以降はこの「補助装置」が機能せず、ミスが起きた瞬間にパニックに陥ってしまいます。

頼みの綱は「個」のクオリティのみ

厳しい言葉ですが、ここまでの試合や過去の采配を見る限り、吉田監督では現状を大きく改善させるのは難しいと言えます。

吉田監督はハードワークを掲げてチームを率いていますが、前任者に比べあまりに安直すぎるテーマを掲げてしまいました。リージョの戦術はスペインでも難解過ぎるとしてアレルギーを生むほどですが、せっかく積み上げた土台を自ら捨て去いるように感じてしまいます。

こうなると、頼みの綱は「個」のクオリティです。

イニエスタへの負担ばかりが募る

結局のところ、チームの流れを劇的に変えられる「個」はイニエスタだけと言えます。ビジャとポドルスキも世界的な名手ですが、彼らはボールの出し手の存在抜きに輝けないプレイヤーたちです。

つまりは、イニエスタへの負担がますます募ってしまうと言うこと。これはまったくもって喜ばしいことではありません。彼ほどのプレイヤーに戦術を丸投げして勝敗を委ねるだけとは、あまりにリスペクトに欠けると言えます。

イニエスタは現在、フィジカルコンディションが整っておらず、オーバーワークは明白です。世界的クラッキといえども、キャリアの晩年。かつての輝きを常時求めるのは、あまりに酷でしょう。

日本人プレイヤーたちがアクションを起こせるか?

イニエスタへの負担を軽減し、チームを改善させるには日本人プレイヤーの「個」が必要不可欠です。

幸い、クオリティの高い選手やポテンシャルを秘めた選手は多く在籍しています。山口や西は言わずもがな、三田や古橋、宮あたりにはチームの先頭に立って牽引するようなプレーを期待しています。

劇薬としてチームを鼓舞し続けたポドルスキは、残念ながらキャプテンの座を辞しました。彼はヴィッセルにとって数少ないキャプテンシーを有した選手でした。しかし「若い選手たちの成長が必要」と彼が語ったのも事実です。こうして振り返ると、ポドルスキはチームの根本的な課題をいち早く察していたのでしょう。

つまりは『世界的なタレントに頼らず、自らもアクションを起こせ』ということ。

次の公式戦は、5月12日の鹿島アントラーズ戦。難しい相手となりますが、殻を破り、重い空気を振り払うような「アクション」をぜひ期待しています。

フォルツァ神戸!!!