戦術の発展が著しい昨今のフットボールですが、その代表的なトレンドの1つがGK(ゴールキーパー)のビルドアップへの参加ではないでしょうか。
ヴィッセル神戸でもこの戦術をチームとして採用しており、飯倉がその役割を担っています。
そこで今回は、GKがビルドアップに参加するメリットについて解説します。どうして現代サッカーではビルドアップ型のGKが増えているのか、その理由に迫ってみましょう!
GKがビルドアップに参加する3つのメリット
フットボールの世界では常に新しい戦術が登場しトレンドを形成しています。
中でも近年注目を集めているのが、GKがビルドアップに参加する戦術です。
とくにグアルディオラの登場以降はそのメリットが大きく注目され、欧州を発信源に世界的なトレンドとして広がりを見せました。
この数年は日本国内でもGKをビルドアップに採用するチームが多く、ヴィッセル神戸や大分トリニータ、横浜Fマリノスは代表的なチームでしょう。
では、GKがビルドアップに参加するメリットはどこにあるのでしょうか?
1.攻撃時に数的優位を作れる
1つ目は、攻撃時に数的優位を作れるということ。
サッカーは互いに11人の選手が対戦するスポーツですが、戦術を考える際には「どこに人を割くか」が重要な意味を持ってきます。
例えば、前線に人数を割けばそれだけ守備が手薄になりますし、その逆もまたしかりです。
もちろん選手は常にポジションを流動的に変えながら、局面での数的優位を生み出し均衡を崩そうとします。
しかし戦術が高度化するにつれてこの均衡を崩すのが難しくなってきました。
そこで注目されたのが、GKです。これまで唯一ポジションを大きく動くことなく、アンタッチャブルな存在として扱われてきたGKを、攻撃時のビルドアップに参加させ数的優位を作ろうという訳です。
守備側に視点を置くと、仮に相手キーパーがボールを持った場合、マンマークで守備をしようとすれば最終的に1人マーカーが足りない状態となります(守備側のGKが相手のFWをマークするのは事実上不可能)。
つまり、攻撃側は数的優位を生み出しやすいというメリットが発生します。
2.相手チームのプレッシングを回避できる
2つ目のメリットは、相手チームのプレッシングを回避しやすいということです。
ボールを保持するサッカーが流行をみせるのに合わせて、前線からハイプレスを仕掛けボールを奪取する戦術も同じように台頭してきました。
いわゆるビルドアップとプレッシングの戦いですが、このプレッシングを回避する上でGKは重要な意味を持ちます。
先ほどもご紹介しましたが、ボールを持っていない守備側は相手GKがポゼッションに参加すると、必ずマーカーが1人足りない状況に陥ります。
そのため、最前線からプレスを仕掛けても攻撃側はGKへボールを戻すことで、プレスからの脱出路を確保できるという訳です。
GKへ下げたボールを相手FWを追い掛ければ、その後ろに続くマークが1つずつズレていくことになり、結果として数的優位が生まれます。
3.ハイラインを採用できる
3つ目は、チームとして高いディフェンスライン(ハイライン)を敷けるということ。
最終ラインが前方に動くほど、チームはより相手ゴールに近付けるため、攻撃的な戦いを仕掛けることが可能です。
従来まではCBがその最後尾を担っていましたが、GKがビルドアップに参加するようになり、その分フィールドプレイヤーは前方にポジションを取れるようになりました。
ハイラインを敷けばチームはコンパクトな陣形を保つことができるため、仮に相手にボールを奪われた場面でも近い距離で複数人がプレッシャーを掛けることができます(即時奪還)。
これもGkがビルドアップに参加するメリットの1つでしょう。
GKがビルドアップに参加するデメリットも存在する
さて、ここまでGKがビルドアップに参加するメリットをご紹介してきましたが、この戦術にはもちろんデメリットも存在します。
失点のリスクが高まる
最大のデメリットは、失点のリスクが高まるということ。
再三触れてきたように、GKのビルドアップは攻撃において大きなメリットをもたらしてくれます。
しかし守備においては、ゴールに最も近いGKがボールを扱うことになるため、失点のリスクは高まることになります。
とくに足下の技術に乏しいGKはそのリスクが高まる傾向にあり、相手チームもその弱点を突いてきます。
高度化されたプレッシングを採用しているチームであれば、メリット2でご紹介した「プレッシングの回避」を上回ることも可能で、この辺りはチームとしての完成度が大きく影響する部分でしょう。
今後もGKの存在価値は高まっていく
さて、今回はGKがビルドアップに参加するメリットとデメリットについて解説しました。
2019年シーズンのヴィッセル神戸でもそうでしたが、やはりGKの攻撃参加は失点のリスクが高い戦術です。
ただ、チームとして戦術が浸透し、完成度が高まればそのメリットは増大します。
個人的には、今後もこのトレンドが加速する傾向にあると考えています。まだまだGKがビルドアップに組み込まれる形は黎明期といえ、プレイヤーのスキルを含め伸びしろは大きいでしょう。
戦術の発展はかつてないスピードで進んでいるため、このプレースタイルが革新的な進化をとげても、何ら驚きはありません。
欧州はもちろん、Jリーグでもどんな戦術が登場するのか、楽しみですね!