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【マッチレビュー】Jリーグ第2節 ヴィッセル神戸vsサンフレッチェ広島

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新型コロナウイルス(COVID-19)によるリーグ中断から4ヶ月。いよいよJリーグがピッチに帰ってきました。

今回は、再開後のファーストマッチとなるサンフレッチェ広島とのマッチレビューをお届けします。選手のコンディションは?リモートマッチ(無観客試合)の影響は?などなど、気になるポイントも絡めながら注目のゲームを振り返っていきたいと思います。




両チームのスタメン

ヴィッセル サンフレッチェ スタメン

情報が極端に少なくスタメン予想が難しかったこのゲーム。ホームのヴィッセルは開幕時に取り組んでいた4バックではなく、戦い慣れた3-5-2の布陣を選択してきました。

3バックの左には体調不良のフェルマーレンに代わり渡部が先発。アンカーにサンペールが入り、2トップは古橋とドウグラスがコンビを組みます。

一方のサンフレッチェ広島は開幕時とまったく同じメンバー。3-6-1の並びで、最前線にレアンドロ・ぺレイラを置き、ドウグラス・ヴィエイラと森島がシャドーに入ります。

【前半】

4か月の中断は、誰も経験したことのない未知の領域。その影響からか、立ち上がりは両チームともスローな展開でスタートしました。

ヴィッセルは最後尾からじっくりパスを繋いで攻撃を組み立てる一方、サンフレッチェは選手間が近い距離を保ちコンパクトな陣形を維持しながらブロックを敷いてきます。

こうしたブロックを敷いてくる相手に対して、ヴィッセルは2つの対抗策を持っています。1つはボールを左右に散らし、相手のブロックを横に広げパスコースを作る方法。主にサンペールとイニエスタがこの役目を担い、機を見て前線に決定的なパスを出します。もう1つは、前線の選手が動き出すことで相手のマーカーを剥がす方法。FWはもちろん、CHの山口や西の飛び出しが、昨シーズンはアクセントとして効果を発揮していまいした。

しかしこの試合では、両サイドにパスを展開するシーンが少なく、サイドの動き出しも好調時に比べ少ない印象でした。とくに左サイドの酒井はやや迫力に欠け、まだコンディションが上がり切っていないように見受けられます。西が何度か決定機を演出し好プレーを披露していたため、酒井の不調がよりフォーカスされた印象です。

また、前線の古橋とドウグラスも、好調時の動き出しの良さが見られず、足下に入ったボールを収めることもできませんでした。この辺りもまだまだコンディションやボールタッチのフィーリングが戻ってきていないのではと推測できます。

ヴィッセルが攻め手を探し試行錯誤をする中、セットプレーから先制点を奪われてしまいました。35分、森島のコーナーキックにニアでハイネルが触り、こぼれたボールをレアンドロ・ぺレイラに押し込まれてしまいます。セットプレーの守り方には改善点がありますが、歯車が噛み合い出す前に失点を喫してしまったのは痛手でした。

ただ、それ以上にサンフレッチェの選手達のコンディショのが良さを評価すべきかもしれません。帰陣のスピードや局面でのプレスの強度などは、明らかにヴィッセルのコンディションを上回っていました。また、戦術的な完成度も高く、選手が自分達のタスクをしっかり認識し実行していた印象です。このあたりは、城福監督のマネジメント力の高さではないでしょうか。

【後半】

後半開始直後の48分。ゴール前でボールを受けた川辺のスルーパスに途中出場の浅野が反応。酒井の背後をとって抜け出し、2点目を奪われてしまいます。

ヴィッセルからすると立ち上がりにややギアを入れ直し攻勢に打って出ようとした矢先の失点。先制点もそうですが、この試合の失点はタイミングの悪さが試合展開に影響したように感じます。

さて、攻撃面に関して少し戦術的な部分に触れておきましょう。個人的に気になったのが、古橋とドウグラスの関係性でした。この試合両FWはツートップを組んでいますが、2人が揃ってサイドに流れてしまい、中央に選手がいないシーンが散見されました。

サイドに流れてプレーすることが悪い訳ではないのですが、イニエスタやサンペールといった一級品のパサーがいる状態で、中央の選択肢を削ってしまうのは勿体無い。例えば、ビジャと古橋は、どちらかがサイドに流れた場合は2人が交差するようにしてプレーしていました。こうすることで、中央に選択肢を残しつつ、サイドからの攻撃も活性化することができます。

ゲーム途中から渡部に代えて小川を起用してスリートップにすると、前線の流動性が一気に高まったことからも、中央の選択肢を残す重要性がうかがえます。ただ、サンペールに代わり田中が投入された以降は、むしろ前線で渋滞が起きてしまっていた点は見直しが必要でしょう。この辺りも、今後戦術を浸透させていかなければならないポイントです。

その後試合は、点を取りに前がかりになった状態を突かれて、ぺレイラにこの日2点目を決められて3-0に。リーグ再開最初の試合は、フラストレーションが溜まるゲームとなってしまいました。

スコアほど内容は悪くなかった

待ちに待った再開直後のゲームとあって、3-0というスコアはいささかショッキングなものです。ただ、スコアほどゲームの内容が悪かったかというと、個人的にはそう感じていません。

再出発へ向け自分達のスタイルにこだわった

相手に完全に崩されたシーンは少なく、少ないチャンスを確実に決められたといった印象でした。また、出場した選手によってもコンディションの差が大きく、まだまだ調整段階というエクスキューズも加味しなければなりません。

もちろんサンフレッチェの組織的な戦いぶりやコンディションの良さは素晴らしいものです。ただ、前半間際のドウグラスの決定機をはじめ、決めるべきシーンを決めていればもう少し違った展開になっていたでのは…というのが率直な感想です。

また、ヴィッセルはあくまでも自分達のスタイルにこだわってプレーしていた点も考慮しておくべきでしょう。フィンクは昨季の就任直後、ウェリントンを使ったパワープレーを用いるなど、現実的な戦術も引き出しとして持っています。しかしこの試合では徹底して繋ぐコンセプトを重視してきました。

4か月の中断という未知の領域から再出発を図るにあたって、あえて自分達のスタイルを貫き原点を思い出させたと受け取れば、この敗戦に新たな意味を見出せるかもしれません。

コンディション調整と若手の積極起用が鍵

とはいえ、タイトルを獲ると位置づけたシーズン。今後勝ち点を積み上げていくには、コンディション調整が鍵を握ります。主力がベストパフォーマンスを取り戻すことはもちろん、若手の積極的な起用にも期待が高まります。

このゲームでも、佐々木や菊池がベンチ入りするなど、楽しみな人材は多く揃っています。27人という少数メンバーで過密日程を乗り切るには、若手の活躍は不可欠でしょう。

うまくベテランを休ませつつ、チーム全体のボトムアップを図るーー。

7月の6試合は、まずここからのスタートとなりそうです。

最後に、リーグの再開に向けて尽力してくれた多くの関係者と仲間達に。そして、最前線て戦ってきた多くの医療従事者への感謝を伝えさせてください。本当にありがとう。

そしてこれからも一致団結して『トモニイコウ』。




ABOUT ME
フットボールベア―
1987年生まれのクマみたいに大きい人。 日韓W杯に魅了されサッカーにどっぷりとハマる。学生時代を神戸で過ごしたことから、ヴィッセル神戸サポに。 2016年からはライターとして活動し、おもにEC系メディアを取り扱う。かねてからサッカー情報を発信したいと考えており、このサイトを立ち上げる。