前節、コンサドーレ札幌戦で黒星を喫したヴィッセル神戸。
代表戦を挟んで2週間空いたこの日の相手は、松本山雅FCです。
策士・反町監督が率いる相手だけに、油断のできない相手。
ホームのノエスタで行われたJ1第26節のマッチレビューをお届けします!
両チームのスタメン

この日のヴィッセルのスタメンは、いくつか変更点がありました。
まず、飯倉に代わってGKは前川が先発。IHには安井のポジションに古橋が下がり、前線にはビジャがスタメン復帰しました。
一方の松本山雅はシャドーのポジションで中美が先発。セルジーニュ、阪野とトライアングルを組みます。
【前半】両指揮官の戦術が激しくぶつかり合う
松本山雅の反町監督と言えば、百戦錬磨の策士として知られています。
この試合でもヴィッセルのストロングを消すことに主眼を置いた戦術を、立ち上がりから披露します。
一方のフィンクも、負けず劣らずの戦術家の一人。
前半は両指揮官の狙いが激しくぶつかり合う試合展開となりました。
松本が仕掛けたサンペール対策
前節のコンサドーレ戦、ヴィッセルのパスワークが今ひとつ機能しなかったのは、サンペール対策が上手く機能していたからでした。

この日の松本山雅もコンサドーレ同様、ディフェンスラインとサンペールの間にマーカーを置き、ビルドアップを制限。
興味深かったのが、反町監督はこのタスクをセルジ―ニョに任せ、阪野を右サイドに置いたということ。
機動力と運動量に長けたセルジ―ニョに真ん中にポジションを取らせることで、ヴィッセルのパス回しを分断します。
合わせて、阪野がサイドにポジションを取れば、ロングカウンターの際にヴィッセルのCBとの競り合いを避けることができます。
これは欧州でときどき見られる手で、ノルウェー代表やギリシャ代表が採用していたように記憶しています。
優先順位はセルジ―ニョのサンペール封じが一番だったでしょうが、阪野の右サイド起用も反町監督らしい抜け目のない采配です。
サンペール封じに対抗するヴィッセル
さて、両指揮官の戦術がぶつかり合うと冒頭でご紹介しましたが、このサンペール封じに対してフィンクはロングボールを多用する策で対抗してきました。

ディフェンスラインからサンペールにボールが繋げないなら、あえてそのエリアを避けロングボールで打開を図ろうという狙いです。
ここで存在感を見せたのが、フェルマーレン。高精度なロングフィードを何度も供給し、ビジャや田中にパスを繋げます。
松本山雅からすると、サンペールを封じるため中央の人数は置きつつ、前線の動きも絶えず気にしなければなりません。
ロングボールを弾いてセカンドボールからカウンターを狙いたいところですが、精度の高いフィードと前線のトラップスキルが上回ります。
長短のパスを織り交ぜながら徐々にスペースを広げていくと、前半13分に先制点が生まれます。
フェルマーレンから酒井にボールが渡り、そこから左サイドのビジャへ。
ビジャは得意のエリアからドリブルで侵入すると、右足を一閃。やや巻き込むような軌道のボールがゴール右に吸い込まれ、松本山雅の壁を切り崩しました。
古橋のIH起用が新たなオプションに
さて、前半のプレーで特筆すべきポイントに、古橋のIH(インサイドハーフ)起用が挙げられるでしょう。
古橋と言えば、スピードを生かしたサイドの突破や裏への飛び出しが持ち味です。
しかしこの日任された左IHは、イニエスタや安井が起用されることからも分かるように、プレイメーカーが担うことが多いポジションです。
古橋にこのポジションが務まるかやや不安でしたが、いざ試合が始まるとまったくの杞憂に終わりました。
古橋はボールをさばく役割ではなく、IHの位置で激しい上下動を繰り返し中盤を活性化。守備ではサンペールの横まで戻りつつ、攻撃ではビジャを追い越して最前線にも顔を出していました。
加えて、このポジションに古橋が起用されることで、ヴィッセルの攻撃に新たなオプションが加わります。それが左サイドへの飛び出しです。
これまで右サイドでは山口蛍が積極的にスペースへ飛び出すことでチャンスに絡んでいましたが、左サイドは酒井の単独突破がメインでした。
古橋がIHに起用されることで、両サイドに飛び出すプレイヤーを確保することができます。これはパスの出し手が揃うヴィッセルにおいては、大きなメリットを生み出してくれるでしょう。今後、試合終盤で得点が欲しいシーンでは、攻撃的なオプションとして選択肢に入れることもできそうです。
【後半】松本がハイプレスを仕掛ける
前半は1-0で折り返し。
松本としては、0-0でセットプレーorカウンター勝負を想定していたでしょうが、ビジャの個人技とフィンクの采配が上回りました。
ただこのまま黙っているはずもありません。後半は立ち上がりからハイプレスを仕掛け、攻勢に打って出ます。
プレスにやや陣形が乱れるヴィッセル
松本山雅のプレスは、前線の3人を含めかなり強度の高いものでした。
後半の立ち上がりから何かを仕掛けてくることは十分予想されましたが、ヴィッセルはこれにやや面喰ってしまい、陣形が乱れてしまいます。
とくにこの日スタメンに起用された前川を含めたパス回しはややヒヤヒヤさせられました。
実際67分にはパスミスからピンチを招く場面もあるなど、この辺りは前川の課題とも言えます。
一方で、この試合では何度もシュートストップでピンチを防ぐなど、確実にプレイヤーとしての成長も感じさせてくれました。ポテンシャルは高い選手だけに、安定感を身に付けハイパフォーマンスを継続して欲しいですね!
粘り強い守り続けたことで小川のゴールが生まれる
ヴィッセルはいくつかピンチを作られながらも、球際で強さを発揮し、粘り強く守ります。
こうした流れが実を結んだのが、80分でした。
中盤でサンペールがボールを受けると、右サイドの西に糸を引くようなパスを供給。
これを西が落ち着いて右足で処理すると、そのままアウトサイドでクロス。中央には古橋に代わって出場していた小川が待ち構えおり、しっかり頭で合わせて追加点を奪いました。
このシーンを評価するなら、まずサンペールの高精度なパスでしょう。
この日のサンペールは守備での貢献度も高く、特大のポテンシャルを遺憾なく発揮してくれていました。
さらに西のトラップと、浮き球をアウトサイドで送るクロス。何気なくプレーしていますが、かなり難易度の高いパスだったと言えます。
小川も中央でマークを外す巧みなバックステップで、大きな追加点を決めてみせました。
もったいなかった終盤の失点
ヴィッセルは試合終盤に2-0となって試合を決めたかに思えましたが、松本山雅はロスタイムにセルジ―ニョがゴールを決めます。
ゴールキーパーのロングキックからヘディングで繋がれると、セルジ―ニョがワンタッチで合わせて得点。
結果としてこのまま2-1で試合は勝利しましたが、失点が多いチーム状況だけになんとかクリーンシートで終わりたかったのが本音です。
とくに前川が先発している試合をゼロで終われれば、本人にとっても大きな自信になったでしょう。
一瞬の隙とは言え、なんとももったいない失点となりました。
残留争いを抜け出す大きな一歩
この試合を勝利したヴィッセルは、勝ち点32で9位まで順位を上げました。
15位の浦和レッズとの差はわずか1。16位のサガン鳥栖とも5差しか離れていない大混戦です。
とはいえ、残留争いを抜け出すための一歩としては、非常に大きな意味を持ってきます。
次節からは川崎、広島、F東京と難敵が続くだけに、取れる試合で勝ち点を稼いでおくことは重要です。
9月18日は天皇杯で川崎と対戦
一方で見逃せないのが、9月18日の天皇杯です。
対戦相手は川崎フロンターレ。リーグ2連覇中の王者はここのところ勝てない試合が続いていましたが、前節のジュビロ磐田戦ではきっちり勝利しています。
両クラブともリーグの合間をぬっての試合だけに、スタメン起用に誰が起用されるのかも興味深いところです。
ヴィッセルとしては、神戸ユニバーでホームアドバンテージを得られる点は追い風。さらにポドルスキのベンチ入りも期待されるなど、見所たっぷりの試合と言えます。
ACLの出場権を勝ち取るためにも、クラブの未来を左右する大一番になりそうですね!
ガンバレヴィッセル!!!