一部スポーツ紙が報道した、ヴィッセル神戸によるアーセン・ベンゲルへの監督就任オファー。
いつもの飛ばし記事かと思いきや、5月27日にはヴィッセル関連の情報では確度の高いデイリースポーツまで報道するなど、にわかに信憑性が高まっています。
ベンゲル就任報道の流れ
ベンゲルへのヴィッセルオファー報道を最初に報じたのは、海外メディア。海外でのスポーツ報道は「飛ばし記事」も多く、今回の情報も当初はこと類と見られていました。
しかし週明けの5月27日には、ヴィッセル関連の報道では信憑性の高いデイリースポーツが発信。国内主要メディアも追随するなど、ただの飛ばしと切り捨てるには状況が真実味を帯びてきています。
三木谷会長は「具体的な動きはない」とするも…
この報道に対して、三木谷会長は「具体的な動きはない」とコメント。
また、栗原強化部長も「特に話せることはない」と発言するなど、両氏とも公式にオファーを出したことは認めていません。
ただ、気になる点もいくつかあります。
1つは、これまで移籍報道に対応していた三浦SDのコメントが登場していないということ。
先ほどのスポーツ紙の報道には、三浦SDと平野アカデミー部長兼スカウト部長が渡欧して、ベンゲルとの交渉にあたっているとの情報も。これが真実であれば、三浦SDのコメントが出ていない理由となり得ます。
もう1つは、リージョの就任やビジャの加入時なども正式な契約が結ばれるまでは、クラブから一切コメントはなかったということ。
ヴィッセルに関する移籍報道やゴシップまがいの記事は連日聞かれますが、オフィシャルな発表に関しては意外と口が堅いヴィッセル。交渉の進捗や商業的な理由から情報漏れを嫌っているのでしょう。相手が大物になるほど、慎重な動きが必要となるサッカー界。
こうした背景も、今回のベンゲルの報道が真実味を感じさせる理由と言えます。
気になるベンゲルへのオファーの内容は?
さて、メディアでは既にヴィッセル側からのオファーの詳細を掲載しているものもあります。
オファーは2年半契約。年俸は破格の4億6,000万
契約年数は、2年半。この夏に就任するとなると、2021年のJリーグ終了時までの契約ということになります。
また、年俸は4億6,000万円で、Jリーグの監督としては破格の金額です。ただ、アーセナルの黄金期を築き、欧州フットボール界でも名将としての地位を築いたベンゲルに対しての提示としては、妥当と言えます。
実現すればイニエスタ級のビッグディール。しかし…
仮にベンゲルがヴィッセル神戸の監督に就任すれば、イニエスタ加入にも劣らない世界的なビッグディールとなります。ただ、懸念材料がない訳ではありません。
ベンゲルはパスサッカーを志向するが、バルサのそれとは違う
ベンゲルと言えば、多くのサッカーファンを魅了する攻撃的なパスサッカーを特徴です。アーセナルでも徹底してパスを繋ぎ、フィジカル優位の現代サッカーとは一線を画してきました。
日本でもベンゲルスタイルの人気は高く、代表監督への待望論がたびたび聞かれるほど。かつて名古屋グランパスを率いた経歴も、この声を後押ししています。
しかし、ベンゲルのパスサッカーは、ヴィッセルが目指す「バルサ化」とは違います。ベンゲルはダイレクトにショートパスを繋ぐスピーディーな攻撃を目指しますが、バルサはゆったりとしたパス回しを好みます。
このスピード感の違いを、同じパスサッカーとして括るのはやや無理があるでしょう。
ヴィッセルの「バルサ化」の目指すところは他にあるのか?
ただ、ベンゲルのスピード感のあるスタイルが、Jリーグとの相性が良いのは事実です。幸い個のスキルが高いメンバーは揃っており、スタイルが浸透する可能性は多いのあるでしょう。
もちろんバルサのパスサッカーとは距離が離れてしまいますが、ヴィッセルが目指す「バルサ化」が他にあるとすれば納得はできます。つまり、バルサのスタイルを模倣するのではなく、クラブとしてアイデンティティを模倣するということ。
バルサはフットボールクラブの枠に収まらない存在として確固たる地位を築いています。このクラブの在り方を、アジア版として目指しているというなら、一時的な妥協案としてベンゲルの招聘はありでしょう(妥協案としてはあまりに贅沢ですが…)。
この数週間の報道に注目
いずれにしても、現状では「憶測」の域を出ない報道です。
動きがあるとすれば、この数週間。仮にベンゲルを招聘するなら、ビジネス的な価値を高めるにはバルサとの親善試合までには決着をつけたいはず。
連敗街道を脱出し落ち着きを取り戻したかと思いましたが、またしばらくは騒がしい毎日になりそうです。